個人的に繋がっているJリーグサポ仲間の一人に、毎年Jのホーム開幕戦を迎えたタイミングで「あけましておめでとうございます」とTwitterで呟く方が居る。あけましておめでとう――それは勿論通常であれば元旦1月1日に、または仕事始めに、せいぜい松の内の期間に交わされる挨拶であるけれど、サッカーのサポーターにとっては「新しいシーズンが開幕したタイミングこそがあけましておめでとうなのだ」ということなのだろう。3/19の駒沢でのスフィーダ世田谷FCの開幕で、私はそれを深く心に刻むこととなる。
 個人的な話となるが、2021年の10月末に東京から三重に引っ越した私にとっては二年ぶりのスフィーダの開幕戦だった。昨シーズンのホームゲームは柏原美羽選手100試合セレモニーが行われた9/11の西が丘しか来られなかったのでホームゲームは約半年ぶり、ホーム開幕戦は二年ぶりだ。久しぶりに来るホームゲームというだけでも感慨深いのに、今回は更に特別なことが盛り沢山だった。ホームタウン世田谷区内にある聖地駒沢での開幕戦、推し選手柏原美羽が新キャプテンに就任した最初の公式戦、2017年9月よりずっとスフィーダを後押しして下さっているサミット株式会社様によるサミットブルーウェーブマッチ、三年ぶりのリーグ戦声出し解禁、行かない理由はどこにも無い。
 
 結論から言ってホーム開幕戦は最高だった。試合結果についてはまた別の話になるけれど、もうスタジアムの雰囲気、ハリセンの響く音、ユキ・ラインハートさんのスタジアムアナウンス、トリニィーとざっくぅが居る風景、アカデミーの子たちのグッズ販売、応援、もう言い出したらキリが無いけど、今回はせっかくなのでしっかり振り返ろうと思う。
 
サッカー声出しサポ仲間、観戦レギュラー陣との再会
→これはインターバルが一番短い人であれば12/10の栃木での皇后杯以来
 
サッカーホームゲーム、グッズ販売、圧倒されるほどのスフィーダ幟による歓迎、ホームゲームでしか会えない方たちとの再会
→去年の9/11以来
 
サッカーホームゲームでの声出し応援(アカデミーの子たちとのコラボ応援) 
→2019年10/26以来
 
サッカーキッチンカーの常連様BOAR’S CAFEさんとの再会 
→2021年10/10以来
(大人の事情で……いつも出店してるキッチンカーさんたちも西が丘ではお店が出せないらしいので、去年の9月は会えませんでした。あともうひとつの常連さんAobaのからあげさんにお会い出来なかったのが残念でした)
 
▼自家製ソーセージ、ホットドッグが絶品のBOAR’S CAFEさん(この写真は二年前のAGFで撮ったものです)
スタジアムパーソナリティのユキ・ラインハートさんも「美味しい」って食べてるんですよ、アメリカ人が絶賛するソーセージ、ホットドッグ、これは間違いないですw まだ食べたこと無い方は是非是非!

 
 
 11時の12メンバーズの先行入場から、限定グッズの販売開始、席の確保、横断幕設置、ゲーフラの組み立て、出店ブースへの立ち寄り、選手たちのピッチ内アップ開始、選手の個人チャント開始、13時のキックオフまで、本当にあっという間だった。こんなに時間が無いと思わなかった。そんな中でも、道行く途中で「ショコラさん?」と呼び止めて下さった方、去年ぶりにお会いする方、コロナ流行が始まってからスタジアムを敬遠されていてもう何年もお会い出来ずにいた方、応援エリアまで声を掛けに来て下さった方、スフィーダファミリーのあたたかさに触れて、もう試合が始まる前からだいぶ泣きそうだった。
 ――あれ? ホームって、こんなにあったかかったっけ?
 遠目に見掛けたけれど声を掛けそびれてしまってお話出来なかった方も居る、それでも元気なお姿が見れて嬉しかった。これは私に限った話ではないとは思うが、実のところスタジアムでお会いする方たちで本名まで知ってる方はほんの一握りだ。Twitterで繋がってる方がいらっしゃってもハンドルネームしか知らなかったりもするし、何年も前からお話してるのにお顔しか存じ上げない方も居る、けれどずっと長年スフィーダ世田谷FCを一緒に応援している、一緒に戦っている、私たちの間にはそれがあれば充分こと足りる。
 
 一般入場が11時半に始まり、だんだんと座席が埋まって行ったものの、それでもまだまだ空席が目立った。今回の駒沢での開幕戦に向けて、選手、スタッフ、ボランティアスタッフ、スポンサー企業の方々、数えきれないほどの多くの人間が集客に走り回っていたのを私たちは知っている。一昔前――少なくともサミット様がスポンサーについて下さった2017年の夏以前は、選手たち自身が世田谷区内の駅前で手作りのポップやプラカードを手にチラシを配ったり、広報担当も兼ねていた永田真耶選手(当時背番号11)が汗を流しながら祖師谷の街を走り回ったりしていた。それが今ではサミット株式会社様、株式会社トムズ様、株式会社ドトールコーヒー様、一部の選手たちの所属先でもあるスポンサー企業様が多くのサポートをして下さっている。あの頃とは比べ物にならない数の人間が動いてスフィーダの開幕戦を成功させようとしていた。今回の目的は入場料収入ではなく、まずはスフィーダ世田谷FCというチームを知って貰うこと、女子のアマチュアリーグ最高峰のチームが東京都世田谷区にあること、観客たちをワクワクさせるようなサッカーをすることを知って貰うこと、それらが最大の目的だったと私は考えている。だから私たちの居る声出し応援エリアから、スカスカのスタンドが見えるようじゃダメなのだ。
 ――天気に恵まれたのに、まだ意外に客入ってない、お願いお願い、もっと来て!!
 心配は無用だった。キックオフの13時にはもうスタンド席は満員だった。忘れていた、初見の人間、あまりサッカーの試合に馴染みの無い人間はそんなに早くスタジアムには来ない。おそらく13時前に駆け込みで来る人が多かったのだろう。
 
 太鼓が鳴る、ハリセンが鳴る、三年ぶりにコールリーダーの声に合わせて声出しサポーターが中心となってチャントを歌う、これは去年の皇后杯三回戦でも行われたけれど(この時は各都道府県のサッカー協会が声出しの可否を決めたようで、三回戦の栃木県会場で約三年ぶりの声出し応援が認められた)この大人数で、ホームゲームでの声出しは三年半ぶりだ。
「今日色々慌ただしくて、スタンド席の皆さんに応援よろしくお願いしますって言う暇無かった」
「それ、オレも思った。しまった」
 コールリーダーと声出しサポ代表のKさんが、声を揃えて言った。それについても杞憂だった。あの頃一緒に応援していたファミリーたちは、スフィーダの応援をちゃんと覚えている、声が出せない期間だってハリセンと太鼓だけで何とか応援していたからハリセンのリズムだって余裕で覚えている。
 
 胸に付けてる マークに誓い
 自慢のファイトで 敵を討つ
 世田谷区から勝利のために
 来たぞ我らのスフィーダ
 
 祖師谷大蔵にゆかりのあるウルトラマン、そのウルトラマンのテーマの替え歌が駒沢に響く。
(世田谷区から来たって……ここ世田谷区だよ。どちらかと言えばこの歌はアウェイゲームの方がよく似合う。それでも、この聖地駒沢でウルトラマンが歌えるのは本当に嬉しかった!)
 
 ああ、年が明けた。
 シーズンが始まった。
 スフィーダフットボールの始まりだ。
 
 結果としてこの日の入場者数は2,407人。スフィーダの歴史の中で、過去最高を更新したようだった。ここ数年はコロナ流行の影響もあり、1部リーグ優勝目前だった2022年ホーム最終戦(オルカ鴨川戦)ですら902人と1,000人に満たなかった。初タイトル(2部優勝)がかかった2020年のホーム最終戦(ASハリマアルビオン戦)でも672人、最後に1,000人を超えたのは、まだ誰もがノーマスクで応援が出来ていた2019年の開幕戦――この日もサミットブルーウェーブマッチで、大エース大竹麻友のホームゲームデビュー戦でもあった――この時の1,022人だ。
 勿論、招待券をバラまいたから、サミットチラシ(アプリも可)やドトールのレシート(店舗、期間限定)提示で入場無料になったから、天気が良かったから、東京の桜の開花宣言後の週末でありお花見ついでに来たから――様々な要素が沢山あるのだと思う。チームだってきっとそれは想定済みだ。大事なのはスフィーダというチームを知って貰うこと。確かに、来場した十人のうち一人が……迷惑行為のようなものをする困った客である可能性も無いことも無い、それでも残りの九人のうちの一人がこの日をきっかけにスフィーダのファンに、サポーターになってくれるかもしれない、次節は友達を連れて来てくれるかもしれない。裾野を広げるということはリスクを伴うこともあるけれど、それでも現状維持に甘んじているクラブはあっという間に時代から取り残されてしまうのだと思う。だからこの日のホームゲームは大成功だ、そう私は信じている。
 
 勝ち点3という結果がついてくれば最高だったのに――そう思っている人が少なくないことも知っている。実際私もそう思ったし、勝利を確信し主審のホイッスルを待ちながら目の前で打たれたシュート、揺れたゴールネット、がっくりとピッチに倒れたGK石野妃芽佳の背中を私たちは忘れない。勝ち点1を得た――というよりも取れるはずだった勝ち点3のうちの2が目の前で零れていった――そう思うのも頷ける。そんな中で帰り道に大竹麻友のお母様が笑顔で声を掛けてくれた。
「去年の開幕戦は負けたのよ~? 今回は引き分けなんだから」
 頭では分かっている、勝ち点0じゃない、1だ。分かってた、分かってたけど、やっぱり負けたような気分だった。でも麻友ママの笑顔とこの言葉に心から救われた。後で改めて話をさせて貰ったら、結果は変わらないのだから次を考えるしかないじゃない――と。ここから、ひとつひとつの積み重ねですね、泥臭くいきましょうとのことだった。愛娘が故障中でベンチにも入れない中でも熊本県から駆け付けてくれた彼女は、流石背番号10の大エース大竹麻友のお母様だ、そう思った。
 
 その日のうちに三重県に帰り、翌日YouTube配信で試合のおさらいをした。今シーズンからスフィーダの実況担当となった星野一弘アナ曰く、多くの選手たちが「開幕戦でしっかり勝ちたい」と言っていたことをアーカイブで知り、やっぱり胸が痛んだ。去年のことがあったから、尚更今年は開幕を勝利で飾りたい、誰もがそう思っていたのだろう。実際にSNSで「みんなが繋いでくれたチャンスを活かせず終えてしまった」「スタジアムの雰囲気は最高だっただけに、非常に悔しさの残る開幕戦となってしまいました」そう書いている選手も居た。無事に集客出来るかが不安で、そんな中で当日満員のスタジアムを見て、ひょっとしたらハーフタイム辺りで暫定入場者数を耳にしていた可能性もあるかもしれない、過去最高更新だよ――そんな情報も得ていたかもしれない、後半に入り無事に先制して、このまま守り切って勝てる、今年は開幕戦勝って終えられる――きっとそんな安堵が、油断が、選手の中にもサポーターの中にもあったのだと思う。そのわずかな綻びを見逃さなかった――二部から戻って来た挑戦者である静岡SSUボニータが強かったのだと思う。
 去年の開幕戦は、下部リーグから昇格して来たばかりのチームに負けた、それでもリーグ後半戦の巻き返しで優勝出来た。大事なのは負けた事実ではなく、そこから何を学び何を修正し、次に生かせたか。スフィーダの選手たちは、失敗を次に生かせる選手たちだ。今シーズン新キャプテンとなった柏原美羽は、挫折を乗り越えて這い上がって来た強者だ。だからきっと大丈夫。選手たちはもう次節を見ている、サポーターも前を向こう。
 
 試合結果としては相当に悔しく心が折れそうな展開だったことは否めない、それでもやっぱりスフィーダファミリーは最高だったし、スフィーダ世田谷FCというチームが大好きだ、そう思えた東京遠征だった。
 
 あけましておめでとうございました。
 2023のスフィーダは、スフィーダフットボールは、まだ始まったばかりだ。
 
 
▼試合結果

 
▼試合終了後、ピッチから戻って来る選手たち
 
▼会場に貼られていた選手たち直筆の目標、これは柏原キャプテンのもの
 
▼2023シーズン新グッズ ミニ幟(一般価格2,000円/会員価格1,500円)
 
▼長﨑茜選手の所属先企業(株)ドトールコーヒー様からご依頼頂き、茜ゲーフラを描かせて頂きました。
インスタで紹介してくれたあかにゃん、ありがとうございましたブルーハート
 
 
【オマケ】
▼シーズン開幕で明らかになりました、キャプテンマークの色! 去年はピンクだったし、ユニのサプライヤーが変わっても差し色がピンクなのは変わらなかったから今年もピンクだと思ったのに……すっかりやられました。悔しかったので、ちゃんと黄色のキャプテンマークをしているかっしー絵を描きました。
 
※ついでにTwitterとアメブロもろもろのアイコンもこれにしました。フリー素材なのでこちらからご自由にどうぞw
 
 次にホームゲーム来られるのはいつだか分からないけど、でもYouTubeで遠い三重から応援してます! 新キャプテンかっしーが率いる2023年のスフィーダ世田谷FCをよろしくお願いします!