――皇后杯

 ――伊賀上野

 サポーター歴五~六年、もしくはもっと長いスフィーダサポは、大体このキーワードを耳にするとがっくりと肩を落とすのではないだろうか。2014年以前の話は分からないが、少なくとも私が応援を始めた2015年以降の伊賀上野(上野運動公園競技場)での戦績は5戦1勝4敗、皇后杯だけで4戦1勝3敗となる。各都道府県のサッカー協会と皇后杯の運営を巡った大人の事情なのか分からないが……大体皇后杯の一回戦、二回戦は西から始まり、そして何故かスフィーダの皇后杯は大体この魔物の住む伊賀上野から始まることが多い。我々サポーターも、もはや笑いのネタとして扱うことが多いものの、それでもやはり勝率が非常に非常に悪いため、なるべく伊賀には行きたくないというのが本音だった。

 参考までに過去七年の皇后杯の戦績をスフィーダの公式HPの試合結果から引っ張って来てまとめてみた。

サッカー2013年 二回戦 神村学園高校(鈴鹿スポーツガーデン)6〇1

        三回戦 ジェフレディース(コカ・コーラウエスト広島)2●5

サッカー2014年 一回戦 新潟医療福祉大(テクノポート福井)6〇2

        二回戦 藤枝順心高校(コカ・コーラウエスト広島)0●1

サッカー2015年 一回戦 聖和学園高校(四日市中央緑地公園陸上競技場)9〇0

        二回戦 ジェフレディース(上野運動公園競技場)0●1

サッカー2016年 二回戦 セレッソレディース(上野運動公園競技場)3〇0

        三回戦 ベガルタレディース(藤枝総合運動公園サッカー場)1●5

サッカー2017年 二回戦 ジェフレディース U-18(上野運動公園競技場)0●1

サッカー2018年 二回戦 ASハリマアルビオン(三木総合防災公園陸上競技場)0●4

サッカー2019年 二回戦 静岡産業大学磐田ボニータ(上野運動公園競技場)0●1

 

 伊賀上野で勝てたのは2016年のみ。それ以外は全部0-1のスコアで負けている。前年の2015年は格上のなでしこ1部ジェフレディース相手にかなり良い試合をしたが、2017年はそのジェフの下部組織(U-18)に敗北した、私の記憶の中で最悪の皇后杯はこの年だったと思う。このイメージが強い為か、2017年以降特に「伊賀上野行きたくない」「あそこに行って良い思い出ひとつも無い」という風潮が強くなったようにも思われる。

 

▼ピッチ内ウォームアップ

 
 そんなフラグを経ての……今年の二回戦だ。
 相手は静岡SSUアスレジーナ。
 ――ん? 新チーム? 
 だなんて思うかもしれないが、去年戦った静産大磐田ボニータの新名称である。
(静岡SSUアスレジーナがトップチームで、その下部組織に静産大と磐田東高校とジュビロレディースがあるようで、更に今年から、これまで長いことパルセイロレディースを率いていた本田美登里監督を迎えた模様)
 つまりは……去年負けた同じ相手と、去年負けた同じ場所での再戦というわけだ。
 ――マジか? こんなことってあるのか!!!
 この日の伊賀は日向は暖かいが、風が吹くととても寒かった。ピッチ上も結構風でボールが流れているように見えた。メインスタンド向かって右側には太陽が煌々と顔を見せている。
 ――コイントス、コートの方取りたいね。あっち側眩しいよ。
 スタンドで、複数のサポーターがそう口にする。こういう時の#11茜は大体強い。どうやらコートを選べたようだ。
 しかし、しかし、前半……決定機がいくつかあったのに全く揺れることのないゴールネット。前半34分、絶対的エースの#10麻友がGKとの一対一を外した辺りでサポーターの焦りもかなり高まっていたように思えた。
「前半のうちに取らないとヤバいよ」
「美春、結構眩しそうだもんな、後半は智美の方がそうなるんだよ」
(※静岡のGKは2016~2017年にスフィーダに所属していた高橋美春)
 その3分後に先制点を奪われ、我々の焦りは嫌な予感へと変わった。
「え? なになに? 待ってよ、もうやだよ~? 皇后杯、伊賀上野……」
 思わず口に出してしまう嫌なキーワード。
 周りの、これまでの伊賀上野での黒歴史を知る仲間から聞こえる苦笑い。
 この流れを僅か2分で断ち切ってくれたのが、麻友と同期入団で同じサミット所属の#7さつきだった。相手GK美春との一対一を冷静に決め、笑顔で仲間たちの歓喜の輪に飛び込んでいったさつき。身長差が20センチある#9美月にジャンピングハグをして、美月に抱っこされた状態でスタンドのサポーターに手を振ってくれた姿にスタンドからは「親子かっwww」なんて笑いが起きた。この鮮やかなゴールと微笑ましい姿は、スフィーダイレブンのみならずサポーターの空気までもガラッと変えるには充分だったと思う。その後には美月の見事な超低空ダイビングヘッドでなんとか勝ち越しを決めたスフィーダ、そして後半64分には、ゲームキャプテンの茜の頼もしすぎる追加点。
 
▼動画配信無かったようですが、JFAの公式YouTubeでハイライトまとめてくれてるので是非! 美月のダイビングヘッド最高だから是非!
 
 これまでのスフィーダはこんな場面で先制点を取られてしまうとそのまま焦ってズルズルと負のスパイラルに陥り負けてしまうことが多かったように思われる。そこから追い付いて勝ち越せる力とメンタルが培われたことはとてもとても大きい。実際、正直言うとそのあと静岡に追加点を許してしまったり、全然勝ってる試合に感じないような嫌な流れも、我慢すべき苦しい時間も長かった。けれど、皇后杯というノックアウト方式の試合ではしっかり勝つことが大事で、それが大前提だ。十点差だろうが一点差だろうが勝てば良いのだ。勿論反省すべき点、修正点は多かったようにも思われるけれど、そこは我々サポータの心配するところではないだろう。きっとチームがしっかり一週間かけて仕上げてくれる。
 
▼試合終了後、整列を終えて戻ってくるスフィーダイレブン
 
▼四年ぶりに伊賀上野の地で聞けた勝利の挨拶
(あーーーー! Vジャンプしたかった~あせるあせるあせる
 

 そんなわけで、鬼門伊賀突破です!

(「伊賀フットボールクラブくノ一」のチームではなく、会場としての「伊賀上野」って意味で)

 最初、「白河の関」的な意味で「スフィーダが今年は伊賀の関を越えたぞ~!!」みたいなこと言おうかと思ったんですけど、実際伊賀には幕末の文久年間(1861~1864年の僅か三年)に関所があったようで、それがまた上野運動公園よりも西にあったのでやめましたw

 

 

 次はベガルタレディースとの四年ぶりの対戦ですね!!

 余力が合ったらその話もちょこっと書こうと思います。

 

 とにかく二回戦突破おめでとう!!

 ベガルタも二回戦は同じ土曜日だったので、中七日って条件は一緒ですね。

 なでしこ2部のチャンピオンとしてなでしこ1部のチームに挑む……「最強の挑戦者」として最高の試合を魅せて欲しいものです。

 

 

【オマケ】

 以前#5かっしーがブログで書いていた、スフィーダバスの運転手さんの小川さん!

【かっしーブログ20181206】「小川さん」

 

 今回もスフィーダの選手たちを連れて安全運転で伊賀上野まで送り届けて来てくれました。気さくな方だと、かっしーも書いてますが、我々サポーターにも気さくに話し掛けてくれるんですよ。しかもね、普通こういう運転手さんって、運転してきて、選手たちが試合してる間は仮眠取ったり休憩したりするじゃないですか? なのに、普通に我々の後ろで一緒に応援してくれました!!

 

「相手の17番(静岡:藤田桃加選手)足速いし、上手いね~! なんかオルカのあの子思い出すなぁ……」

 ――え?

 いやいや、実際相手の17番には苦しめられましたよ(GK美春も「スピードスター」って呼んでましたし)#15みーちゃんが頑張って貼り付いて守ってくれたけど。でもそこからオルカの選手(#7 浦島里紗選手のこと)をすぐに思い浮かべるって……確かにプレースタイルとか身長とか、似てるなって思ったけどね。いやいや、でも我々サポーターならともかく、運転手さんでそこまで相手チームのことも知ってるのって……凄くない???? こんなに小川さんの近くで試合を観たのは初めてだと思うんですけど、ちょっとしたコメントにもスフィーダ愛をめっちゃ感じました、なんか嬉しいね。

 小川さんも……2017年から(おそらく毎年)伊賀上野まで運転して来てくれてるようなので……いつも敗戦後の空気を纏って世田谷まで運転して帰るのシンドかったと思うんですよ。だから今回「やっと伊賀の帰り道、気持ち良く運転して帰れる~!!」みたいに仰ってましたwww もうサポーターと一緒じゃんwww  栃木でも小川さんと一緒に応援して、喜びたいです~!!!