りさぽん
リクエスト
信頼 続きです
手を引かれて静かな夜道をふたりで歩く
理佐からなにか言葉があることもなく足音だけが響いて、お互いが違うことを考える時間が流れる
話すことがあるならはやく言ってほしい
でも、怖くて聞きたくない
色んな気持ちが入り混じって逃げ出したくなる
「由依、外涼しいし、公園で話さない?」
うん、と返事をしつつ公園で話すなんて普段しないことを提案されて、理佐は大事なことを話すつもりなんだなと思った
「あのベンチ座ろっか。はあー、風が吹いて気持ちいいね」
理佐にとっては心地いい風でも
私にとってはこの風も、今の私と理佐の空気感と合わさって爽やかな綺麗な別れにぴったりだななんて思って、なにも返事ができなかった
「……由依、ごめんね。」
「土生ちゃんから、由依が不安がってるって…一人にしてごめん」
……いつも気づいてくれるじゃん。
こうなる前に、いつもなら気づいてくれる。
理佐のごめんを素直に受け止めることができない
気づけば理佐に抱きしめられていて、私は泣いていた
「由依、ほんとにごめん、、ごめんね。」
「……理佐……わたし、別れたくない」
涙ながらに伝えたけど、
理佐はいまどんな顔をしてるかな
こんな重たい彼女いやだって改めて思ったかな
「別れるわけないよ、由依と別れようなんて考えたことない。」
「…ほんとに?」
「うん、本当。」
「じゃあなんで、、」
「どうしたの?」
「うーうん、なにもない」
「由依?…由依が思ってること全部おしえて?
不安に思ってること聞きたい」
「でも」
「なに言われても、何も思わないよ。」
「じゃあ…なんで付き合ってた人と二人でご飯行っちゃうの?行ってほしくなかった。やだ…理佐まだ好きなのかなって」
*
「ごめんね、由依…いっぱい考えさせちゃってごめんね」
みいの家を出るとき「由依ちゃんのこと泣かせんといて」と、お叱りを受けて、土生ちゃんとは「想ってるだけじゃ伝わらないよね」と、色々話した。
わたしの腕の中で涙を流している由依の頭を撫でながら、どうしたら安心してくれるかをずっと探している
「今更言っていいのかわかんないけど、由依の不安が少しでも無くなるのなら……」
「ん、?」
「由依に、なんでわたしとねるが別れたか話してもいい?」
いま付き合っている由依にこんな話をするのは酷だと分かっているけど、この話をすることが由依の安心に繋がると思った
「うん、大丈夫」
「突然、別れよう。ってねるに言われたの」
「そうなのかなって思ってた」
「ほんと?」
「うん、だって理佐分かりやすいんだもん」
「…ねるにね、言われたの、りっちゃん好きな人おるよね?隠そうとしても無駄だよーって、笑って言われた」
「え、どういうこと」
「わたし、その時から由依のこと好きだったの。由依を好きなこと、私よりも先にねるが気づいて、」
「………」
「どうしていいか分かんなかったけど、ねるに言われなかったら今こうして由依といれなかったかも」
「理佐は、ほんとにそうだったの…?」
「…うん、恥ずかしいけど、言われてすぐ気づいた。目で追っちゃうし、気にかけてるし、由依のこと好きだなって」
「そんなの、初めて聞いた」
「恥ずかしくて、、」
「……わたし、理佐にねるとまた付き合うって言われたらどうしようってずっとこわかった…だから、話聞けて良かった」
「不安にさせてごめん…わたし由依から離れたりしないよ。それに、由依のことずっと好きだから、別れたら私の方が、なんか、だめになる…」
「ふふ、理佐いつもより素直だね」
「こういう時にしか言えないから」
今日ねるに、由依が最近なにか悩んでるように思うって話したら、りっちゃんはいつも大事なこと話さんから、そのままやと誤解されちゃうよ。って言われたばかりだった。
だから、私の言葉を聞いて、由依が照れた笑顔を見せてくれることに安心する。
「ねぇ、ねるは理佐と別れてそれで良かったの?」
「色々話して好きな人と一緒にいるのが一番だよって言ってくれて、ねるもいまは新しい恋人がいて幸せそうにしてる」
「あ、そうなんだ……よかった」
「安心してもらえたかな?」
「うん、理佐、わたしのこと大事にしてくれてるんだなって…」
「ふふ、由依も普段そんなこと言わないじゃん、可愛い」
「んっ、だって理佐が…色々言ってくれたから…」
うるうるさせた目で恥ずかしさを訴えてくる由依が可愛くて、愛おしい
「由依、もう一回ハグしていい?」
「うん、何回でも。」
「可愛い、由依」
「わたしも理佐から離れたりしないよ…」
「言ったよ?その言葉忘れないからね」
「うん、信じてほしい」
「由依、だいすき、ほんとに」
「わたしも、だいすき」
由依を不安にさせないように、信頼してもらえるように、もっと大事にしようと心に誓った。
お読みいただき有り難うございました。
信頼、これにて終わりです。
すべて読んでくださった方ありがとうございました。