りさぽん
リクエストです。
「由依ー、準備できた?」
「んー、もう出れそう」
「よかった、全然間に合うね」
「そうだね、結構たのしみだなー、」
「私も。行こっか」
と、理佐が自然に手を握ってくる
「ダメだよ今日は、二人でお出かけじゃないんだから」
「あ、そっか、そうだった」
今日は一期生みんなで打ち上げも兼ねてごはんに行く
メンバーお墨付きのお店に全員集合すると、お疲れ様と言い合って、日々を振り返ったり、、あっという間に時間も経ってそれぞれ話したいことをメンバーごとに話している状況になりつつあった
「理佐、どうしたんだろう」
ガヤガヤしている中、隣にいる友香に声をかけられる
遠くに座っている理佐が携帯の着信に気づいて、一瞬はっとした顔をしたのが見えたけど、
「ん?わかんない」
と、苦笑いで返しながらお酒を流した。
みんながいる大部屋から一人で抜けて、きっと誰かと電話してるんだと思う。五分程したら帰ってきて、周りのメンバーに様子を伺われてるけど、「うーうん、大丈夫、大丈夫」と、座り直している。
分かりたくない……
なんで何かを感じてしまうんだろう…
いつも一緒にいるからこそ、理佐の少し浮かれた嬉しそうな表情に簡単に気づいてしまった
なんか、、やだな、、
意識を遠く離れた理佐の話し声に集中させたけど、他愛のない話をしているだけで、特に電話のことは話していないみたい。
しばらく時間が経っても、中々心のモヤモヤが消えてくれなくて、気分を紛らわせるために目の前にあるお酒を一気に飲み干す
「ちょっと、ゆいぽん、急にそんな」
「なんか今日、そういう気分なんだよね、」
と、笑って、4杯目まで飲んだ記憶が少しあるような、ないような、、
*
「…由依、、由依っ」
私にとって一番落ち着く声が聞こえて、目を開けると理佐の顔が私の上にあって、いつの間にか理佐の膝の上で寝ていたらしい
「っ、あ、りさだー」
「なんで無理して飲んだの」
「りさおこってるー」
「そんなにお顔赤くさせて」
ほっぺたをぷにっとつままれる
「ふふ、、みんなは?」
「もうみんな帰ったよ。はーい、由依ちゃん立てますか、お家帰りますよー」
「ん、立てない、、りさ」
両手を広げておねだりする
そんな私の様子を見て、「はいはい、」と言いながら丁寧に抱きかかえてくれた。嬉しさと同時に、頭の中では、誰と電話してたの?という疑問がやっぱりまだ消えなくて、そんなこと怖くて口に出せない分、嫉妬から理佐に甘えたくて首元に顔をうずくめた。
「……りさ、」
「ん?」
「、、、だいすき、」
「由依酔ってるでしょ」
「……いやだ、」
抱きしめている腕をぎゅっと強くする
「どうしたの、、私もだいすきだよ、由依のこと」
誰に対してかわからない嫉妬がどんどん大きくなって、好きという気持ちと、不安な気持ちを途切れ途切れで伝えるのが精一杯だった。
家に着き、いつもより少し多めに理佐に甘えて、お揃いのパジャマ姿でベッドに寝転んでいると
「明日、久しぶりに二人とも空いてるからどこか出掛けない?」
と、理佐からの提案
「行きたい、あ、私気になるお店あるんだけど」
スマホを手に取って検索する
「ん?どこどこ」
と言って、距離を詰めて隣から覗き込んでくる
「これだ、ここのカフェ前から気になってたの、めっちゃ美味しそうじゃない?」
「わぁー、美味しそう、中もお洒落だね。じゃあ、明日はここ行こっか」
「やった、うれしい」
「その後、私の買い物付き合ってもらってもいい?」
「全然、行こう行こう」
「ありがとう、二人でお出掛けするの久しぶりだねー」
「前行ったのが、いつ?半年前、とかかな?」
「え、もうそんなに経つんだ。メンバーとご飯するときも由依はいるけど、二人でお出掛けできるのとは全然ちがうんだよね」
「ん、どうゆうこと?」
「由依を独り占めできるー」
といたずらっぽく笑って言いながら、理佐にぎゅっとされる
「うわっ、急にびっくりするじゃん」
「ふふ、、明日楽しみだね」
「うん、たのしみ」
「じゃあ明日もあるし、そろそろ寝よっか」
「うん、おやすみ」
「おやすみー、」
久しぶりに二人でお出掛けできるのが嬉しくて、楽しみで、理佐が誰と電話していたかの不安なんてどこかに飛んでいっていた。
*
次の日、眠たい目をこすりながら、もうそろそろ九時頃かなぁ…アラーム鳴る前に目覚めちゃった、、とスマホの電源をつける。すると、液晶には十三時を指す数字が映し出されていて、嘘。やってしまった、、と呆れ半分で隣で寝ている理佐を起こす。
「理佐…理佐 起きて、、アラーム忘れてた、、もう1時だよ」
「んー、ゆいおはよう」
「ねぇ…理佐?もう1時だよ」
「うそ…、やだー、やだやだ」
と、高い声を発しながら布団に強くくるまっている
「時間ずらせば行けないことも無いから早く準備しよう?」
ベッドから立ち上がりながらそう言うと、理佐が布団から顔を出して、こっちを見ながらニヤニヤして手を伸ばしてくる
「、なに?」
「…由依起こして?」
「え?……もう理佐早くしてよ」
「いいじゃん、ゆいー」
「、、んっ!はい、起きた」
「ふふ、、昨日とは逆だねー」
と、昨日と同じようにほっぺたをぷにっとされる。
「もう、理佐っ」
昨日の酔っ払った自分の姿を思い出して、つまむ理佐の手をのけると、「はーい」と言ってやっと支度を始める
理佐は元々準備が早いから、更にいつもより少し早い理佐に私が猛スピードで準備して、やっと同じぐらい。私の方が急いでる感あるのになんで理佐の方が早いんだろう、不思議
「由依ー、もう出れそう?」
「んー、すぐ玄関行く!」
「はーい」
「よしっできた!」
「今日はギリギリだね」
「ギリギリアウトね」
と笑いながら言うと、理佐が自然に手を握ってくる。
その手元に目線を移すと、「今日は良いよね?」と確認を取ってくるから、恥ずかしながらに頷いた。デートの始まりって感じがする。
スタートは遅くなっちゃったけど、私が行きたかったカフェにはきちんと行けて、チョコレートケーキもラテも想像以上に美味しくて、二人で感動した。お買い物も思ったよりゆっくりできて、理佐だけじゃなく私まで新しい服を買ってしまった。まあ、可愛いものに出会ったら買わざるを得ないよね。理佐も、由依に似合ってるって言ってくれたし。
「由依ー、そろそろお家帰る?それか夜も食べていく?」
「んー、昨日も食べ過ぎて、今日もケーキ食べちゃったから今日は家で軽く済ませよう」
「そうだね。じゃあ帰ろっか」
「うん、楽しかったね」
あっという間に時間が過ぎ 素直に幸せな日だなと思うことができて、昨日は勝手に疑ってごめんなさい、と心の中でそっと謝る。
「…あ、そうだ由依」
「ん?」
「今度、ねるとご飯行こうってなったんだけどいいかな?」
理佐の口からは聞きたくない名前が急に出てきて一瞬思考が止まる
「え、ねる?」
「うん、昨日電話がきて、ご飯でも行こうってなったんだけど」
あ………そうだったんだ、、
すぐにあの時の理佐の表情と、電話相手がねるだった、ということが腑に落ちてしまう。あー、そういうこと、、と心臓の鼓動が速まる
「いいよ行ってきて。私に確認なんてしなくていいのに」
必死の強がりで何とか口を動かす
「いや、一応言っておいた方がいいかなと思って。ありがとう、じゃあ来週行ってくる」
「うん、ねるかー全然会ってないなぁ、元気にしてるかな」
顔が引きつっていないか不安で、自分でも何を話しているのか分からなかったけど、何とか会話を繋げて家に帰った。
ご飯は軽く済ませる、なんて言ったけど、色んな考えが頭を駆け巡って完全に食欲を失い、軽くも食べれない。
ねる、、か、
ねると理佐は私が知っているだけで一年以上は付き合っていた。
私が知っている期間でそれだけだから、もう少し長いのかも知らない。
お互いに雰囲気も似ていて、いつも楽しそうで、私も側から見てお似合いだと思っていた。
だから二人が別れた時は、正直びっくりして、メンバーみんな予想外に思ったんじゃないかな。別れたことは直接言われたわけでは無かったけど、その時の理佐の様子は誰がどう見ても何かあったんだと察するほどだった。
だから、今でも私は理佐が振られたんだと思ってる。
そして二人が別れて、半年後に理佐はわたしと付き合うことになった。半年で忘れられるものなのかな…あの脱力した理佐の姿を知っているから、未練があってもおかしくないよねと今更ながらに思ってしまう。
そんな理佐の背中を遠目で眺めながら、まだ…好きなの?と、聞いちゃいけないと分かっている事を聞きそうになる
「…由依?明日仕事はやいでしょ?先お風呂入っておいで」
「え、あ、うん」
普段以上に普段を装い、お風呂場に向かう
一人で湯船に浸かりながら、色んなことが頭を駆け巡る。
二人で行くんだよね、、どこに、、前から連絡取ってたってこと?
ねるは、理佐がまだ好きなの?
ねるが、理佐をまだ好きだったら….
良くない考えが止まりそうに無い
「……だめだめ、」
考えをリセットするために、一度頭まで湯船にざぶんっと潜ってぷはっと顔を出す
すると、逆に冷静になって、ふと、
理佐に振られる…
という考えが頭をよぎった
お読みいただきありがとうございました。
続きます。