「3年生の頃」

**********

あたしにも後輩ができた

この後輩がいたから
あたしは部活を5年間
続けることができた


この頃のクラリネットパートには
問題があった

パートリーダー(パトリ)が
部活に全く来なかった

だからあたしは
自分のパートも練習して
パトリのパートも練習して
後輩の指導もしていた

全てをこなすことは
無理に近かった

全体練では指揮者に言われて
パトリのパートを演奏していたから
自分のパートの練習ができなかった

けどあたしは我慢していた
文句なんて言わなかった

合宿が近づくとその我慢に
限界がきた

あたしは本音を
パトリにぶつけた
それは合宿中の夜中だった

真っ暗でパトリの顔が
はっきりと見えなかったから
本当の気持ちを全部言えた

ちゃんと
「つらいんです。部活に来てください」
と言った

泣きそうだった

けど伝えた
これでもう大丈夫だと思った

しかし合宿後も
パトリは部活に来なかった

悔しかった

だからあたしは
パトリのソロを奪った

銀杏祭に出なくていい
もう来ないで

と指揮者と一緒に
本番30分前に伝えた

パトリは泣きながらいなくなった
本当に本番は出なかった

しかし結局2日目は
パトリは本番に出た

あたしは悔しくて
泣きそうだった

銀杏祭後も
結局パトリは部活に来なかった

あたしは部活を
やめようって真剣に思った

なんであたしが
こんな思いしなくちゃいけないんだ
もう部活なんてやめたい
行きたくない

って毎日思っていた

けどある思いが
この考えをくい止めた

「よし、退部しよう」
と思った瞬間に
頭にフッと出てくるのは
後輩の顔だった

後輩はどうなるの?
1人になっちゃうよ?
それで良いの?
後輩までつらい思いさせるの?

自分に問いかけた

……退部はできない

あたしは退部どころか
1回もさぼったりしなかった

素直に甘えてくる
後輩が大好きだった

だんだん気持ちは
ポジティブになった

ツラくなくなった

パトリに対しての
悔しい思いもなくなった

しかし定演前になっても
やっぱりパトリは来なかった

あたしは平気だった
もうその頃には慣れてきていた

パトリが珍しく部活に来たときも
あたしは笑顔で迎えた

けど本当は大丈夫じゃなかった

ストレスに気付かなかった

あたしは定演2日前に
インフルエンザで倒れた

ストレスによって
体は疲れ果てていた

定演に出れないかもしれない
という不安で
あたしは家で泣いた

そんなとき先生が
「三枝さんのために
みんなでインフルエンザにかかりましょう」
とミーティングで言ってくれた(らしい)

おかげで
あたしは定演に出ることが出来た

当日は38度の熱があった

2日休んだせいで
出来ていたところが
出来なくなっていた
悔しかった

定演後の引退セレモニーで
パトリにプレゼントを渡すときに
あたしは涙が出た

引退セレモニーで泣くのは
初めてだった

迷惑いっぱいかけられたはずなのに
パトリが引退するのは
悲しかった

なんだかんだ言って
3年も一緒にいたパトリが
大好きだった

パトリのおかげで
強くなれたし
色々な考えを持つことができた

今思うと
感謝したくなってしまう

今ならこの1年間のこと
笑って話せます