娘に父親と写っている写真を見せた。

 

2歳の娘が1歳ちょっとの時に父親が家を出た。

出て行った数日後に2回荷物を取りにきた。

最初にとりにきた時、ベビーゲートの中にいた娘はハイハイで父親に寄って行ったが、父親は抱っこすることなく出て行った。

その時の娘の表情は今でも覚えている。

 

2回目に荷物を取りに来た時には父親は娘を抱っこした。

その後、家を出る姿を見て、少し泣いたがそのあとは何ともなさそうに見えた。

 

元夫が出て行った後も、持っていかなかった衣類やそのほかの荷物はそのままにしていた。その荷物を見て「おとうさんの」と言うことがあったが、

それは、物の名前を覚えて「お花」「クルマ」と声に出すのと変わらないように見えた。

 

娘が父親を忘れてしまわないように頻繁に会わせておきたかった。

元夫も保育園のイベントは呼んでとLINEして来たが、何度誘っても、行くと言っては直前にキャンセルして結局は来なかった。

 

ドタキャンされた時は、娘が父親を忘れてしまったらどうしよう!と胸が張り裂けそうになったが、それも度々続くと諦めるしかないか、という気にもなって来た。

 

元夫は出て行って半年後くらい経って会いにきた。

大型の台風が来たタイミングで心配になったらしい。

久しぶりの父親、もう覚えてなくても仕方がないと思ってはいたが、

最初こそ少し恥ずかしがっていたが、娘は意外とすんなり馴染み遊んでもらっていた。

人見知りが激しい頃の娘。

すっかり忘れていればこんなにすぐには馴染まないだろうと思うと、わずかながらでも記憶があるのだろうか。

父親は娘が昼寝をしている間に帰ったが、起きた時に娘が父親を探す様子はなかった。

 

娘が

「パパいないの?」と聞いて来たので、

父親との写真を見せるとじーっと見てはいた。

 

それから2日くらい経った後の保育園の帰り、自宅の同じ階に住んでいるご夫婦と顔を合わせた。挨拶をするくらいの関係性なのだが、

ご夫婦に向けて

 

娘は「〇〇ちゃん(娘のこと)はパパとママなの」と言った。

 

夕食の後に

「お母さんはパパとママ?」

 

聞いて来た。

 

翌日保育園に向かう途中で娘を抱き上げた時に娘の靴が落ちてしまい、

通りがかりの男性が拾ってくれた。

 

すると娘は

「お父さんが拾ってくれたの?」と聞いてくる。

 

違うよと言うと

「パパが拾ってくれたの?」と。

 

父親というものが男性を指すのか、保護者のことを指すのか、

小さい胸の内で定義づけをしようとしているのだろうか。

 

少しずつ理解してもらえるよう工夫せねばと思いながら仕事へ向かった。