夫は何も言わずに帰って来ない日が度々あるのだが、特に週の後半にかけて帰ってこなくなることが多い。
とにかく週末を家族と過ごすのは嫌なようだ。
この金曜日は珍しく帰って来たが、土曜日午前中からバイク免許取得のため、
教習所へ行く、という彼なりの段取りがあったようだ。
土曜の朝は私は、すっかり寝坊をしてしまい、娘のスイミングは翌日行くことにした。夫は支度をすると教習所に出かけて行った。
私は、夫と同居したら、週末は外でランチを楽しみたいと思っていたが、いまだにその機会はない。
夫が死ぬまでにしたいことがバイクの運転だと言って教習所に通い始めたが、そんな夫に対して私は、死ぬまでにしたことは夫との外食ランチだ、とうったえたが、夫は私のコメントはスルーし、バイクの運転の次はボクシングをやりたいと言った。
午後は、お仕事関係の先輩たちから娘の出産祝いをいただいたので、内祝いを購入するため外出。そのほか、お下がりを送ってくれた従兄弟にお礼の品も購入したかったのだが、娘を連れベビーカーの移動では時間がかかりそうなので断念。
一人で動く身軽さがなくなったと、こういう時しみじみ実感する。
帰宅すると夫が先に帰っており、晩酌を始めていた。
「今日は夕飯いらないからね」と言う。
お腹いっぱいなのか尋ねると、さっきカレーパンを食べたのと、これからカップ麺を食べたいから、だと言う。
私は、娘の授乳を終えた後、作り置きしておいた惣菜で夕食を済ませる。これ、2人前作っておいた惣菜の残り1名分。夫が帰ってこなかった日に1人前は私が食べたのだ。
夫が食べたカップ麺は、なんとカレーうどん。2日前にカレーの夕食にした時は、1人前の1/3も食べなかったのに、なんだこのカレー祭りは、と心の中で思う。
デザートにエクレアがあると伝えるがいらないと言う。
今日はとにかく私の提供したものは食べないらしい。
夫がなんとはなしに観ていた池上彰のテレビ番組で食料廃棄問題が取り上げられている。「日本もフランスのように食料廃棄は罰金制にすればいい」と力んで言うが、
そうなったら、夫は毎日のように罰金だ。
食べ物は必ず途中で残す。 開けて少ししか口をつけずに放置したアルコールや炭酸飲料。 買っておいて、家に帰って来なくなるから賞味期限が切れてしまう夫が買って来たコンビニで買った弁当類。
本人には全く自覚がないようだ。
夫は20時過ぎには寝室でゴロゴロしてお風呂も入らず眠ってしまった。
夜、娘が珍しく途中で目覚めて泣いた。
私はお風呂から出たところで、髪の毛がびしょ濡れなまま、寝かしつけをする。
夫は、部屋を出たと思ったら、タバコを吸いに行ったようだ。
夫には前妻との間に4人のお子さんがおり、夜泣きがひどかった子には寝かしつけや寝かしつけのドライブに行っていたと言う話を聞いたことがある。
私には、同居後に、4人の子育てで大変な思いをしたからもう子育てはしたくないと宣言して来たのだが、随分と違う扱いに少し複雑な気持ちになる。
娘が眠ったのを確認し、髪を乾かして寝室をのぞくと夫はいつの間にか寝室に戻り眠っていた。
金曜日にボーナスが出たようだが、買うと宣言した冷蔵庫もスルーし、私のリクエストの結婚指輪も買おうとする気配もない。ボーナスで買うと言っていたはずだが。
ローンでバイク買おうか、近くに駐輪場見つけたし!と人の気を知ってか知らずか呑気な発言をしていた。
娘のクリスマスプレゼントについて、おもちゃの木琴はどうかと言うと、
バチで怪我をするか心配だからピアノがいいのでは?と。
こう言うところは、4人の子育て経験が活かされているのではないかと思う。
じゃあピアノだね!と言ってみたものの、夫は自分で買う気はないのだろう。
昨年のクリスマスは私は妊婦で、夫とはまだ同居していなかったが、4人のお子さんたちにプレゼントを買った話は聞いていた。
少し、悶々としながらも、夫が娘とじゃれている様子をみる。
娘は、私と一緒の時には見せないはしゃぎようだ。思わずスマホで動画に収める。
夫は4人分の子育てを経験し、あやすのも上手なのだろうが、こういうシーンを見せられると参ったなあと思う。
そこでふと思う。
夫は私の最大の望みはすでに叶えてくれていた。
それは娘の父親だということを認めたことだ。
妊娠が発覚した時、認知問題でもめた。
認知できないと言われた時、私は目の前が真っ暗になった。
そこから根気よくコミュニケーションを取り、
ついには夫から認知に加え、結婚の意志が伝えられた。
浅田次郎の文庫本「鉄道員』(ぽっぽや)」に収録されている短編「ラブ・レター」みたいだ。
夫さん、結婚してくれたからあなたはいい人です。大好きです。
娘へのクリスマスプレゼントは自分で買えばいいや。
夫は夫にしかできない、夫という存在と父親という存在を引き受けてもらおう。