一度目の探索記事→【廃集落・廃村】山掴集落【秩父】 2018年 4月
2018年、11月某日。
前回の 冠岩集落再訪その2 からの続き――
冠岩集落跡を出て、山を下り、休憩した後に目指したのはここ……、山掴集落跡。
大日堂のバス停から歩いて約30分程度。
道路脇にあった、雑草が鬱蒼と生い茂るコンクリート状の階段を上り、狭い坂をずっと上り、やがて森の中へ。景色が開ける。
跡形もなくボロボロに崩壊した廃屋が視界に入り、それが確認できると、集落跡へ間もなく到着する。
時刻は14時40分ほど。
バスの最終便が16時なのでまだ余裕はあるが、この鬱蒼とした森林の日没は早いだろう。
山を侮ってはならないので、足早に探索を進めることにする。
前回は道を誤って辿り着けなかったが、今回は時間もあるし冷静だ。
しっかりと轍を踏みしめて、確実に集落跡へ向かった……。
この山掴集落跡は、浦山ダム周辺の廃集落群の中でも特に異質といっていいだろう。
比較的家屋が多かった茶平・栗山集落跡と、現役集落の周辺に存在する岳集落跡――どちらも、この山掴と比べればまだ人の生活圏の中にギリギリあるような感覚はあった(あくまでもこの山掴と比べた話である)。
ところがこの集落はどうであろうか……。
山掴集落跡――日中であっても光が十分に届かないような暗い森の中、そんな場所で急斜面をなんとか切り拓き築いたような家屋たち。
そのひっそりとした妖しさはまるでダークファンタジーの世界のようで、魔女がいてもおかしくないような雰囲気だ。
まあオカルティックな話をすると色々と脱線するし荒れるのでそれは置いておいて、ともかくこの集落跡はとりわけその異質さを放っている。
どうしてこのような場所に集落を築く必要があったのか。
少し脱線するが、民俗学や風俗(エロい方の意味じゃない)が好きな人間なら「サンカ」だとか「山の民」などを想像する人間もいるだろう。
そもそもサンカが実在したのか、実在したとして集落を築くようなことがあったのか~ということについて考えると、これもまた脱線するので今回はやめておくが、もしそのような「山の民」をルーツに持つ集落だった場合、私はサンカではなく「木地師」の方が可能性は高いのではないかと思う。
木地師についても詳細を書くと長くなるので以前の記事を参照して欲しいが、もしこのような山の中・森の中の急斜面に集落を築いた人間がいた場合、それの始まりは木地師の可能性もあるのではないか~と思う。
加えてその木地師がもとは都を追われた人間だったり、戦乱で流れた落人だった場合、このような人里から離れた場所でひっそりと暮らしていたことにも頷ける。
もしくは、浦山は猟が盛んであったようなので、猟師兼林業従事者が単に作業小屋の用途も持った住居としてこの場所に居を構えたか――そのような予想もできるだろう。
しかしその猟師や林業従事者も元を辿れば木地師や落人をルーツに持つ人間だったりして……。
などと妄想は膨らむが、いい加減にしないと話が終わらないのでこのへんで終了。
まとめると、そんな神秘性や興味深い妖しさを持った集落跡である。
※とある説では、落人は木地師と関係なく創作に尾ひれがついただけ~というのもある。
RPGをクリアした後、隠しステージに出て来る森のボス……的な。
おい、マジでやった奴怒らないから名乗り出なさい。先生怒らないから。
集落跡、廃屋が連なる場所へ到着。
この斜面、直線上に廃屋が並んでいる。規模は小さいが、雰囲気でいえば他の集落群の中でもトップクラスだ。
このテレビ可愛すぎでしょ。
上記の通り規模は小さいので、比較的早く探索も終わる。
以上が山掴集落跡の様子である。
前回、春に来た時は外縁を眺めるだけで終わってしまい、夏は来ることさえできず、しかし今回はしっかりと探索できたので良かった。
紅葉と相まって妖しさも一層増したこの集落を記録できたのは貴重な体験ともいえる。
上述の理由からとても興味深い集落跡で、これまで回ってきた浦山の廃集落の中でも特に面白い場所だと思った。
しかし画像の通り崩壊が著しいので、日に日にそれが進んで近い未来に確実に完全崩壊するだろう……。
こんな斜面に突貫工事のような力技で建てた家屋だ。崩壊の早さも仕方ないと言える。
時刻は15時10分を過ぎている……。
予想より早く探索が終わり、後はバスに乗って駅へ戻るだけだ。
まだ時間はあるので、ゆっくりとバス停まで歩くことにする。
このトンネル、明かりもなくて真っ暗で怖かったです(小学生並感想)。
こちらは公民館跡。現在は使われていない。
山に日が沈み、やがて夜を迎える浦山ダムと、湖岸の集落。
ダム湖と紅葉の組み合わせは美しくもあり、どこか幻想のようなもの悲しさとゆらゆらと揺らめく恐怖さえ感じる。
しかしそういった感覚でさえ面白いと思えてしまうのがこの場所だ。
やがて16時を過ぎてバスが到着し、それに乗って西武秩父駅へ。
これももう三回経験したことになるが、いつ来てもこの場所の魅力は色あせない。これは部外者だからこそ感じるものであろう。
今回も懲りずにノルマ達成(このアングルから武甲山を写すこと)。
西武秩父駅に到着。
ノルマたry
せっかくだからと、今回も秩父神社を参拝。こちらも紅葉を迎えて美しく荘厳な境内だ。
学業成就・合格祈願などのご利益があると言われる、霊験あらたかな神社である。
やがて神社を後にして駅へ戻り、西武線を乗り継いで池袋へ。
今回の探索も全て終了となる。
さて、2018年は4月・8月・11月と三つの季節で飯能・秩父の廃集落を巡ってきた。
季節によって雰囲気も変わり、一つの廃墟でも様々な顔を覗かせることが如実に感じられて、この飯能・秩父はたいへん面白い場所である。
また、あれだけ「もう登るものか」とヒィヒィ言ってた鳥首峠も、キツい場所には変わりないが愛着のような感情が湧いて、なんとも不思議である。
そして落人伝説も伝わるあの廃集落……。落人の他にも木地師の存在も匂わせる要素があって、歴史的に見てもたいへん興味深い。
これで飯能・秩父の廃集落シリーズは一旦のところ一段落となるわけだが、これで終わりではない。
個人的には時間さえあれば何度訪れてもいいと思える場所なので、これからもその移り変わりを見守っていきたいと思う。
【P.S.】
記事の投稿が2019年になってしまいすみません。許して。
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