「今晩が山です」
そう獣医師に告げられ、私はすぐに東京に住む息子と娘に連絡しました。
娘は学生ながら、迷わず新幹線に飛び乗って駆けつけてくれ、
息子が自宅に戻ってきたのは夜の11時ごろでした。
今晩が山――そう言われていたけれど、
うちの子は、その瞬間を待っていてくれたかのように、奇跡的に持ち堪えて、
子どもたちとしっかり顔を合わせてくれました。
鼻に繋がれたカテーテルから、
「スーッ、スーッ」とわずかに聞こえる鼻息が、
この子がまだここにいてくれている命の証。
私が少しでも目を閉じた隙に、
ひとりで旅立ってしまったら…そう思うと、一睡もできませんでした。
翌朝、息子・娘と一緒に、延命治療について話し合いをしました。
「カテーテルに繋がれたままじゃなくて…
この子が好きだったキャットタワーにも、お外にも、
抱っこして連れて行ってあげたいよね」
そんな想いから、延命治療をやめる決断をしました。
本当は、この大事な決断に
海外赴任中の夫にも加わってほしかった。
けれど、何度連絡しても、全くつながらず…。
結局、私と子どもたち3人で、決めるしかありませんでした。
その夜、担当の先生が自宅へ来てくださり、
診察のあと、カテーテルを外してくださいました。
「体温が下がってきているので、
ホットカーペットを下に敷いてあげてください」と、
病院のカーペットを貸してくださる心遣いに感謝の気持ちでいっぱいでした。
その間も、愛猫はじっと作業を見つめていて――
先生が帰り際、
「じっと見てくれてありがとうね。先生はもう行くね」と声をかけた瞬間、
なんと、その子がスクッと立ち上がったのです。
渾身の力を振り絞って、
まるで「ありがとう」を伝えるかのように。
その場にいた先生も、息子も娘も、そして私も、
言葉にならない感動と涙が止まりませんでした。
この子の命の強さ、優しさ、心のあたたかさが、あふれた瞬間でした。
