2018年4月7日(土)
この日私は本番を翌日に控えて不安と期待と絶望をかみしめながら、それでも
わずかな淡い希望を維持しつつ悶々と受験勉強にいそしんでいました。
「乙種第4類 危険物取扱者」の国家試験を受験することになっていました。
この資格は比較的 取得しやすいということで以前から人気があります。
年間約23万人もの方々が受験申請をしています。
危険物取扱者の資格があれば発火性、または引火性のある危険物を取り扱い
それらを製造、貯蔵することが出来ます。
ガソリンスタンドや化学工場などで危険物の取り扱いや保安を監督します。
タンクローリーの運転や化学工場、石油プラントなどには危険物取扱者を置かないといけ
ません。
けっこう、需要の高い資格です。
「危険物取扱者」の資格は甲・乙・丙の3種類があります。
乙種は危険物の内容によって6つに分類されています。
その中でいちばん人気が高いのが「乙種第4類 危険物取扱者」の資格です。
2017年の6月 私は「二級ボイラー技師」の資格(免許)を取得しました。
(筆記試験はまぐれで合格できたと思っています)
その実技講習の時に話をした方に言われていたことがありました。
「乙4の危険物は二級ボイラーとも相性がいいので資格は取った方がいいですよ」
「・・そうなんですか・・」
なんだか、よくわかんないですけど次に資格を取得するとしたら「乙4危険物」にしよう
と決めていました。
2017年の年末にオークションで中古のテキストを落札しました。 1000円だったかな?
/ 小計 1000円
その後、しばらくは少しずつテキストを読み進めていました。
(いつもの事ですが初めは専門用語がさっぱり理解できません)
同時に、試験の日程と仕事の予定をみて、受験申請をするタイミングをはかっていました。
そして3月1日に受験申請をしました。 受験手数料 3400円 / 小計 4400円
試験実施日は4月8日(日)です。
仕事は4月6日(金)には終わるので、この日は確実に受験出来るのです。
試験の日が決まるまで、テキストの勉強は全然進みませんでした。
モチベーションがあがりませんからね。
結局、「やらなければ」と思い 取り組んだのは受験申請をした日からでした。
3月31日の夜 やっと、テキストを最後まで眼を通すことが出来ました。
その勢いでテキストの巻末にあった模擬試験その1 を試してみます。
試験内容は 「危険物に関する法令」から15問
「基礎的な物理学及び基礎的な化学」から10問
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」から10問
合計 35問が出題されます。
それぞれの科目で正解が60パーセント以上あれば合格です。
実際の試験の時間は2時間あります。
初めての模擬試験は1時間で終えられました。
結果は法令-6問正解 物理・化学-5問正解 性質・消火-7問正解
それぞれの科目で60パーセントなので法令は9問以上正解しなければなりません。
物理・化学と性質・消火は6問以上の正解が合格基準になります。
第1回目の模擬試験はみごとに不合格です。
しかし、初めての割にはそこそこの点数になっています。
試験本番までにもう一度テキストに眼を通すつもりでいました。
直感として「なんとかなる!」とこの時は思っていました。
<あと、ほんのちょっとレベル>だったので試験に対する不安はありませんでした。
そして、あっという間に本番前日を迎えます。
仕事が入っている時は急遽 徹夜の作業になったりすることもあります。
前回、模擬試験その1 を実践してから結局 何も勉強を進められていません。
それでも、こころの中の決まり文句は依然「なんとかなる!」です。
そして、試しに2回目の模擬試験 その2を実践してみました。
結果は、法令-2点、物理・化学-4点、性質・消火-6点 でした。
「あれっ!?」 前回の成績よりも落ちています。
模擬試験その1は比較的やさしい問題だったのかもしれません。
それにしても法令-2点 というのは衝撃的な結果です。
もはや <なんともなりませんレベル>です。
「完全にオワタ?」 「これ無理でしょ」 「男らしくあきらめれば?」
「明日はいい天気になるぞ、釣りにでもいけば?」
「テキスト代と受験手続料をドブに捨てるのか?」
「明日のために今まで、どれだけの時間をかけたというのか・・全部無駄にするのか?」
こころの中で様々な声が行き交っています。
「本当にやめるなら今なんだろうな・・」
「危険物取扱者」の受験資格は特別ありません。
受験しようと思えば誰でも受験することができます。
実務経験も必要とされていません。
現実に小学生でも合格しています。 (まれな例だと思います-天才ですね)
「法令-2点の男」・・小学生以下のレベルです。 もはや単なるアホですね。
この資格は受験申請をしても、実際に受験をしないで試験を放棄する方の
数が異常に多く見られます。
平成29年度のデータをみると23万6656人が申請をしていますが、実際に受験した
人数は21万415人となっています。
( ↑ 消防試験研究センター HPより)
私が思うに「簡単に資格がとれる!」と知り、軽はずみで受験申請をしたものの
実際の内容を確認して挫折し、去って行ったのではないかと思います。
資格の取りやすさはあると思いますが、冷静に合格率をみるとこの数年では
28パーセントから34パーセントくらいの数字になっています。
決して高い数字ではありません。
10人のうち6~7人が合格できないのです。
「・・私もか?」 いや、私はあきらめません。 ここからなのです!
私の「法令-2点!」この落第点の原因は何なのか?
答え合わせをしながら、懸命に考えていました。
問題の中にはまるでサービス問題といえるような普通の常識があれば何も専門的な勉強を
していなくても答えを出せる内容の問題が出ることもあります。
私が正解できている問題は、サービス問題だけです。
(過去はこの手の問題が多かったようです)
正解できなかった問題をみると、「完全に内容を把握出来ていなかった」ものや
「微妙なひっかけ問題」でした。
ひとつの問題に対して、5つの答えが用意されています。
その中に1つだけの正解があるのです。
「○○について正しいものはどれか?」 とか「間違っているものはどれか?」
などという問題に対して、ほんのちょっと言い回しが違っていたりする内容のものが
選択肢の中に用意されています。
もちろん、すべての内容が正確に頭に入っていればすんなりと答えられるはずなのです
が意外に覚えなければならない項目が細かくてとても多いのです。 (あっ、言い訳ですね)
危険度の高い順に並べられた危険物の分類。
その危険物の特徴。危険物を扱う者に対する国が定めた取り決め。
物質の三態変化、静電気、物理変化と化学変化、燃焼の三要素。
引火点や発火点の数字、水に溶けるかどうか?色は?臭いは?
毒性は? 指定数量は? 化学反応式は? 火災が発生した場合使用する
最適な消火剤は? などなどありますが・・。
私の対策としてとにかく、些細な言い回しの違いにだまされないようにすることでした。
すぐに、答えを出さずにまず、問題を3回読む。
出すべき答えは正しい内容のものなのか? 間違っているものを選ぶのか?
試験の時間は35問に対して2時間もあります。 たっぷりと用意されています。
じっくりと取り組んでも大丈夫なはずです。
落第点だった問題をもう一度やり直し、満点が取れるまでやりました。
この時点で本番の試験まで24時間を切っています。
残された時間で何が出来るか?
部屋から見える外はとてもいい天気です。
「多摩川に最近行ってないな」 「床屋にも行きたいな」
「ダイソーで買ったプチブロックまだ組み立ててないな」
「BoAさんのライブのDVD見たくなったな」
こんな時に限って様々なことが頭をよぎり始めます。
「もうこの状況から離れたい」という自分がいます。
邪念が次々と沸き起こりますがギリギリの精神力で抑えます。
「もう少しやってみよう」 「やれるだけのことをやって後は潔く散ろう」
私だって「やる時はやるのです!」 (やらない時は何もやりません)
インターネットで見つけた「過去の問題」をプリントしたものが2セット残っています。
が、今 挑戦しても合格基準に達する自信がありません。
とりあえず、テキストを最初から見直すことにしました。
テキストでは重要なことは赤い文字になっています。
これを重点的に読み進め、後は各項目での小テストのような問題を解いていきます。
分厚いテキストです。
テキストの赤い文字は重要ポイントです。
読んでいて「あぁ、なるほどなぁ」「そういうことだったのか」と思う点が
いくつもありました。 (気が付くのが遅すぎます!)
とっくに日が暮れました。
晩ごはんの時にテレビをつけてみると楽しげなバラエティー番組が映っていました。
「楽しそうだな・・」 プチッ! テレビを見ている場合ではありません。
真面目にテキストに眼を通していた・・はずなのですけど。
気が付くと、なぜか世の中は4月8日になっていました!
「眠っていたのか!」やってしまいました。
(私はとても寝つきがよいのです) それにしてもよく寝ました。
朝の5時です。 「なんとかなるかな?」
本試験は15時15分から始まります。 集合時間は14時55分。
受験票をみると3/3と書かれています。
おそらく試験は3回に分けて行われ、私はその最後の組なのでしょう。
まだ、時間はあります。
都合が良いことに、試験会場は私の家の近くです。
ギリギリまで受験勉強ができます。
すぐに、手元にある過去の問題にとりかかります。
1つはまだ合格は出来ませんでしたが、もう1つはギリギリの及第点でした。
可能性が見えてきた瞬間です。
「It’s showtime fox!」 「ふふっ、面白くなってきたぜ!」
この2つの過去の問題を満点がとれるまでやって、後はもう一度テキストに眼を通して
本試験に臨むことにしました。
朝ごはんは食べましたが、昼は食べている時間的余裕はもうありません。
お菓子のベビースターラーメンをおかずに食パンをかじりながら(とても変わったごはんです)
テキストに眼を通します。
時刻は13時前です。
家を14時頃までに出れば余裕で試験会場まで行けるはずです。
電車は使いません。 歩いて行きます。 交通費-ゼロ! / 小計4400円
少し余裕をみて早めに家を出ました。
ゆっくりと歩きます。
そーっと歩かないとむりやり詰め込んだ情報がこぼれ落ちそうです。
40分ほど歩いて試験会場に到着です。
14時35分には会場に到着していました。
試験センター構内には若い方から私のように100歳近い方たちも多く見かけました。
みんな、ベンチに腰掛けてテキストやノートを片手にもくもくと勉強しています。
タイミングよく試験で使う教室にすぐに入れました。
試験会場は2階と3階の、2つの教室に分けられていました。
おそらくですが、1回目の受験者は433人、2回目は328人、3回目は325人
あまりが受験したようです。 (choco調べ)
本日だけでこの試験を受験する人数は1086名ほどになると考えられます。
単純に計算すると369万2400円のお金が動いています。
東京での試験に限り、「乙種第4類 危険物取扱者」は毎週行われます。
(資格ビジネスは立派に成立しますね)
試験に集中しましょう。
テキストを開き、危険物の定義の一覧表を見ます。 最終確認をします。
1類 酸化性固体 2類 可燃性固体 3類 自然発火性物質及び禁水性物質
4類 引火性液体 5類 自己反応性物質 6類 酸化性液体
大丈夫です。 完璧です。
15時15分 試験開始。
法令の問題から取り組みます。
ゆっくりと、あわてずに問題を読みます。 「なんとかなる・・」
30分ほどすると、試験を終えた方たちは退出が許されます。
この時点で私はまだ法令15問の問題すべてを終えていません。
いったいどうすれば、こんなに早く終えられるのだろう? 不思議です。
私が最後の35問目の問題を終えたのは試験開始から1時間20分を過ぎた頃です。
ここから第1問に戻り、もう一度見直します。
どう考えても自信の持てない問題が4つありました。
それ以外はなんとか答えられているような気がしました。
ふと見ると教室はガラガラになっていました。
私の席は一番後ろなのでよく状況が分かります。 残っている人は8人だけです。
今更教室から出てもしょうがないので、そのまま最後まで残り自信のない問題を
もう一度 考えていました。
1問だけ、答えを変えました。
17時15分 2時間経過 試験終了です。
なんと、合格発表は当日でした。
35分後です。 私は外へ出て、近くのコンビニまで歩きコーヒーを
飲みながら発表の時間が訪れるのをぼんやりと待っていました。
そして発表です。
ドキドキわくわく、この瞬間は楽しいですね。
自分の受験番号をみつけて喜んでいる方、記念写真を撮る方、
仲間同士で抱き合っている方、携帯片手に誰かに報告している方
合格されたみなさん、よかったですね。
私はというと・・受験番号はE3-164 です。
あるのかなー? ん?
これは146だ。
あっ! ありました!
E3-164 見間違いではありません。 何度見てもあります。
よかったです。 なんとか合格できました!
帰り道、ぼたん桜が満開になっていました。
ソメイヨシノよりもだいぶ後に花をつけるさくらです。
「サクラ・サ・ク」 私のこころのサクラも満開です。
翌日、12時から消防試験研究センターのホームページでも合格者が発表されます。
正式な通知は4日ほどしたら発送されるそうです。
その通知を待って免状交付申請手続きをします。 2800円 / 小計 7200円
(2018年5月納入分から2900円に値上がりします)
免状送付用封筒に貼る切手料金 392円 / 小計 7592円
(申請手続き書類を郵送する場合は430円の料金がかかりますが
私は窓口へ直接持参します)
ゼロ円 / 合計 7592円
4月中に手続きを済ませれば5月15日に免状が発送されます。
少しでも興味が持てる分野のことを知るということは愉しいことだと思います。
それまで持っていなかった知識を蓄えられることになります。
資格を得たからといってもすぐに、実益に結びつけられるものではありません。
けれども、自分の人生において可能性は広がります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。