桜が満開です。
みなさまのブログでも各地の桜が満開です。
いい季節ですね。
花粉が舞うと辛いのですが春は日本の季節の中で4本の指に入るほど魅力のある季節です。
(4本あったらそりゃ入りますよね・・)
これから新学期を迎える学生さん、新たに社会に出た方、永い勤続を終え退職された方。
これから、夏、秋、冬が来てまた1年したら桜が咲く春を迎えます。
その時に「今年の春もいいけど、去年の春も良かったなぁ」と思えるといいですね。
そのためにも今日をいい一日にしなければなりませんね。 へぃ。
世田谷のとある場所に小さな時計店があります。
看板は出していませんが店名は「とんちぼ時計店」といいます。
ここには、時折 時を刻む事を休めている時計たちがやってきます。
「次の方どうぞ」 「こんにちは」
「初めてですね。」 「はい、よろしくお願いいたします」
「お名前は?」
「EMPORIO_アルマーニと申します」
この日、私のところに現れたのは高級ブランドの名を冠した時計でした。
今までは高性能(カシオのGショックなど)の時計を預かることは控えていました。
なぜなら、一度裏ブタを開けてしまうと、防水機能がなくなることがあるからです。
むやみに触り、外観にキズをつけるわけにもいきません。
ましてや、私のせいで もし、ひとつの大切な時計を壊したら 責任をとれません。
理由を述べて、ひきとってもらっていました。
高度な技術が必要な修理・電池交換にはそれなりの技術や工具・環境が必要なのです。
電話口の向こうで「止まったままの時計があるんだけど見てくれる?」
「いいけど・・、メーカーは?」 「アルマーニの時計」
「裏ブタはどんな風になっている? 平らになっているだけ? 円形の周りに溝がある?」
「小さい溝が・・」 「6個だね?」 「そうなっている」
私の持っている工具で開けられそうです。
しかし、問題はブランド品であることです。
「もし、失敗したら・・」
「もし、キズをつけたら・・」という懸念でした。
「直せる?無理かな?」 その一言が決定打となりました。
「無理なわけはないよ」「電池交換だけで済むと思うよ」
こうしてまじまじと見ると、さすが高級ブランドの時計だと思います。
品がある。 クロノグラフだし。 インターネットで検索してみると数万円で
出ている現行機種でした。
ブランド品の中での廉価版という扱いでしょうか。
高級時計を製造できる技術を生かして大量にさばける商品も作る。
メーカーの商魂のたくましさを感じさせます。 まぁ、いいか。
「大丈夫かな?」 「中はどんな構造になっているかまったく知りません」
「知らないのなら見てみればいいか・・」
「では、はじめましょうか」
時計の動きが止まっている原因を探ります。
おそらく電池が切れたのだと思いますが、いずれにせよ裏ブタを開けることになります。
裏ブタの周りに溝が入っています。
このタイプの裏ブタは開ける時に要注意です。
専用の工具がありますが、開ける際に溝から工具のツメが浮き上がり、勢い余って
フタにすり傷をつけてしまうことがあります。
今回は試みとして裏ブタに初めから保護シールを貼ってみました。
と言っても、ただ単にセロテープを貼っただけです。
何もしないよりはいいかな? という感じです。
この手の溝ありの裏ブタを開ける工具はいくつか用意されています。
ツメが2つのタイプのもの。
それと3つのものです。
これは3点支持オープナーという名称の工具です。(そのまんまですね)
3つのツメの工具の方が安定はしますが、幅の調整の時にフタにキズをつけないように
気をつけなければなりません。
裏ブタは反時計回りで開けられます。
廻す時に工具が滑らないように上から押さえつける力を決してゆるめないようにして
注意しながら廻します。
この時計のオーナーは中学の体育の先生です。
(だからクロノグラフなのですね。)
体格もいいし、パワーもあります。
キズをつけたら、私の身に何が起こるかわかりません。
命がけで慎重に廻します。
少しゆるんだら、あとは指で廻します。
「よかった」 無傷で開けられました。
「ほほーう」
これがアルマーニの内部ですか。
思っていた通り、しっかりとしています。
空間に無駄がないです。
びっしりと機能が詰まっている時計らしく重厚な感じがします。
どんな電池を使っているのか確認します。
電池カバーがあります。
先端の細くなっている2つの部分が隣接する部分のすきまにはさまる形で固定されています。
先のとがったものでひっかけてツメをはずせばカバーは横にずらすことが出来ました。
ボタン電池のプラス面に「395 RENATA」という文字が見えます。
はぁー、やはり高級ブランドです。
スイス製の純正電池が入っていました。
「とんちぼ時計店」にはこの「395 RENATA」電池の在庫はありません。
AMAZONで検索して同じ電池を購入しました。
時計の裏ブタはよくあるパターンとしては今回の時計のように開けるための溝が
入っているタイプと薄い平らなフタが使われているものが多いです。
比較的手頃な価格のクオーツ時計は、後者の平らなフタがパコッとはめられている
ものが多いです。
このタイプのフタには良く見ると一部分だけに隙間が作られています。
そこにバターナイフのような薄いものを入れて力をいれるとはずせます。
こんな感じですね。 ブランド時計と比べるとだいぶスカスカに見えます。
全体的に隙間が多く必要最低限のものしか入っていません。
電池を固定しつつ、時計本体のムーブメントを固定出来るようにプラスチック製の
リングが使われています。
よく考えられた仕組みです。
製作コストも低く抑えられるし、時計そのものの軽量化にも貢献できるわけです。
よく使われている電池は「SR626」などです。
この電池であれば、100円ショップなどでも購入できます。
専門店に持って行き、時計の電池交換を依頼するとおそらく1000円近くの値段に
なると思います。
自分でやれば108円で済みます。 (ただ、失敗するリスクもありますが)
「395 RENATA」電池が届きました。
入れてみましょう。 電池カバーも元の状態に戻してっと。
んっ? 中央の目立つ細い秒針が作動しません。
右の小さな針は動き出しましたが他の針は動いていません。
全身から血の気がスーッとひいていくのを感じます。
やってしまったのか? 弁償かな?
思い出しました。 私はこのような高級時計に触るのは初めてです。
クロノグラフの使い方もよく理解していません。
インターネットで取り扱い説明書を探します。
ふむふむ。 大きな細い針は計測用の針なのですね。
時計本来の秒針は右の小さなものでした。
「助かった」 壊してはいないようです。
左はクロノ機能の分針、真ん中はクロノ機能の時針だということが分かりました。
取説にクロノグラフの設定の仕方が出ていました。
時計の右に3つのボタンがあります。
真ん中は通常の時計と同じように時刻を合わせる竜頭(リュウズ)です。
上のボタンはストップウオッチで言えばスタートボタンです。
同じ上のボタンをもう一度押すと秒針がストップします。
リセットは下のボタンです。
これを押すとクロノ機能の時間、分、秒の針がゼロの場所に戻ります。
電池交換をするとリセットをしても、この針がゼロの場所にこなくなるようです。
調整が必要になります。
上と下のボタンを同時に押します。 2秒以上押すと矯正モードになります。
これでクロノ秒針の調整が出来るようになります。
上のボタンを押すと1目盛り進みます。
押し続けると針が早送りされます。
下のリュウズを押すと次の時針へ切り替わります。
こういう調整が必要なのですね。
さすがに機能が多いと面倒なことも多いです。
でも、無事に電池交換を終えることが出来ました。
これで、この時計はこの先、1年半から2年は動き続けるはずです。
その頃にまた会えるような気がします。
それまで、なるべく傷つかないで美しい時計のままでいてくれたらいいなと思います。
<思考Time>
ふと「時間」って何なのかな?と思っても簡単に答えは導き出せません。
古代の人が夜空を見上げて一日を知り、月、年という概念を当てはめ科学的に
宇宙のシステムを解明して、地球で生きる私たちの足元に時間という道を作りました。
その時間の道は宇宙が始まったビッグバン以降、今日までつながっています。
「時間」はブラックホールでは止まるかもしれませんが、地球上では物理的に止まることは
ありません。
「時間」はやってくるものなのでしょうか?
それか過ぎ去るものなのか。
「時間」を見えるように形にしたものが「時計」です。
時計をみている限り、「時間」はやってくるように思えます。
この地球上に存在するもの、生きるもの、そうでないものすべてに平等に与えられているものが「時間」です。
「人生は一度だけ」と言われていますが、人生どころか、この一秒、一瞬も
一度だけですね。
その積み重ねが歴史になっていきます。
果てしない時間の道の中で、泣いたり、笑ったり、悔やんだりしながら明日を迎えます。
桜の花もひとつの「時計」です。
1年後、また美しい桜の花が咲き誇るはずです。
それまで、また自分の「時間」を刻みながら楽しみに待つことにします。
「とんちぼ」とは新潟の佐渡に伝わる妖怪みたいなものです。
<タヌキ>という説もあります。 また<むじな>とも言われています。
この「とんちぼ」が引き起こしたであろう怪現象を幼少期に体験した友人と
話しているうちに「とんちぼ時計店」の名称が生まれました。
私としてはとても気に入っている店名です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


























