あら、こんにちは
ああ、珍しい場所で会ったね
バッタリ会ったのは、
ぶっきらぼうで、短気で、一匹狼なくせに
美人にだけはめっぽう甘いことで有名(笑)なO氏。
手には、一輪の花を持っている。
彼は外国政府の高級官僚の出身で
定年後、外交員としての駐在経験のある日本に来て
静かな老後生活を送っている人だ。
プライベートな質問を嫌う方なので
それではごきげんよう、と通り過ぎようと思っていたら
今急いでるの?少し時間あるかい?
ちょっと付き合ってもらえるだろうか。
ええ、大丈夫ですよ
今日は暖かいですねなんて、何気ない会話をしつつ
数分歩いて着いた場所は街中にひっそりと立つ寺院。
こっちだよ、と案内されたのは、奥様のお墓だった。
家内は君のことをすごく好きだったんだよ
私も、奥様のこと、大好きでしたよ
静かに眠る奥様に、そっと祈りを捧げて帰った。
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先日奥様のお墓参りへ向かう途中のO氏に
バッタリお会いして一緒にお参りさせていただきました
O氏と親しい仲の上司にそう報告すると
上司からは意外な言葉が返ってきた。
彼はね、2年半前に奥さんを亡くしてから
毎日歩いてお墓に行ってるんだよ。
花好きな奥さんのために、毎日花を持ってね。
これはすごく意外だった。
お酒の席ではいつも若い女性の近くに座り
セクハラまがいの発言も多々あり
郵便局も銀行も、窓口に美人がいないと用も済ませず帰る(笑)
そんな天下無敵の女好きで知られる(笑)O氏が、
毎日一輪の花を手にお墓に足を運び、
奥様に祈りを捧げているというのだ。
奥様亡き後も、O氏の女好きっぷりは変わらないけれど
心の奥は、亡き奥様の姿でいっぱいなのだろう。
もしかしたら生前から愛妻家だったのかもしれない。
誰に知らせる必要もなく、
ただ自分の中でだけ、奥様を愛しぬいてきたのだろう。
奥様は、O氏の奥にある本当の優しさに触れることができる
唯一の人だったのかもしれない。
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O氏が日々通っている奥様の墓石には
和やかに微笑む奥様の顔写真が、埋め込まれている。