私があなたを育てるために

どれだけ苦労したと思ってるの?


誰のお陰で大きくなったと思ってるの?


大学まで卒業させてあげたんだから

これくらいしてくれて当然でしょう?


母からの理不尽な要求を断り

母からの非難を浴びて、精神的な消耗と戦う。


母は思い及ばないだろう

母の意に沿えないことは、私にとっても何よりの苦痛だ。

母の意に沿えず、申し訳なく、哀しい思いでいっぱいなのに。


私の人生の最大の哀しみは

実の母を心から愛し、慕えないことだ。

慕うどころか、時には憎いと思う事だってある。


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高校生の頃

友人の家に泊まりに行った日

家族が全員同じ食卓に集まり

仲良く食事をしているのを見て

不意に涙が止まらなくなった事がある。


どうしてこんな当たり前の幸せな風景が

私の生活には存在しないんだろう


哀しくて哀しくて、たまらなかった。


時が経ち、夫婦2人で暮らす今

我が家の食卓は、笑顔と会話で溢れている。

あこがれていた暖かな食卓の風景の中に自分いる事が

私にとって何よりの幸せの形。

私にとっての家族は、もう、母ではなくて夫なのだ。


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私と母の関係悪化を見るに見かねた夫が

出張の予定を無理やり調整して

1人で母の元に行き、話しをしてくれた。


夫を前に、言葉にならず、ただ泣いていたという母。

母は母なりに、必死で人生を歩んでいるんだろう。

優しく声をかけ耳を傾けてくれる人もいない。


思えば母は1人暮らしで、話し相手もおらず

守ってくれる親も兄弟も夫もおらず

女性一人でどれだけ心細い生活をしていることだろう。


そんな母の元に駆けつけ

静かに耳を傾け、話を聞き、

優しく、場合によっては厳しく諭してくれた夫。


その夜、母からかかってきた電話。


私が悪かった

ごめんね
旦那さんが優しい人で安心ね
よろしく伝えてね

ありがとうって伝えてね

母がこんな言葉を口にする日が来るなんて

思ってもみなかった。


憎みたいのに憎みきれず

本当は愛しくてたまらない母

彼女からこんなやわらかな言葉を聞いたのは

小学生以来だ。


母への申し訳ない切ない思いと

夫の底知れない優しさに

暖かい涙が止まらない夜を過ごした。