先日仕事で帰りが遅くなり、夜0時近くに家に帰ると

夫が残念そうに言った。


「あの子、お父さんの転勤で引っ越しちゃうんだって

 お母さんと2人で挨拶に来てくれてたよ」


その子は4、5歳くらいの男の子で

私たち夫婦の出勤時間と

幼稚園バスのお迎えの時間が近いらしく、

平日の朝よく顔を合わせていた。


最初のころはお母さんの後ろにかくれてモジモジしてた彼も

最近ではにこにこ元気よく「いってらっしゃーい」と

手を振ってくれていた。


夫が出張でおらず、私1人で出勤の時は

ヒールのコツコツという音が近づいてくると

植木の陰にこっそり隠れて「ワッ!」とおどかしてきたりして

ホントにホントにかわいい子だった。

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「明日までは居るらしいよ。○○○号室だって」


そう言われて気付いたけれど

私は彼の名字も名前も知らなかった。

同じ建物内に住むご近所さんの男の子

私たち夫婦は彼のことを「ボクちゃん」とだけ呼んでいた。


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「ハイ、これお姉ちゃんにだって」


そう言って手渡されたのは


お別れのお花


折り紙とガムテープで作ったお花。

一生懸命作ってくれたのが伝わってきて、涙が出そうになった。


翌朝、出勤前にボクちゃんの家を訪ねた。

パジャマ姿のボクちゃんが出てきて笑顔で迎えてくれた。


「はい、これ記念のプレゼント

 元気でね、またきっと遊びに来てね

 お姉ちゃん、住所書いておいたから、お手紙ちょうだいね」

     

「うん、ありがとう。お手紙書くね」


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ボクちゃんに、いつかまた会える日が来るのだろうか。

ボクちゃんから、手紙は届くのだろうか。


ボクちゃんに手を振りながら、涙を我慢して仕事に向った。