短編小説『高森くん』:2 | ちょちょい前田OFFICIAL BLOG

ちょちょい前田OFFICIAL BLOG

ちょちょい前田の日常をちょちょいと紹介します。

僕の憧れのしおりちゃん。

君と同じクラスになって僕の人生は今ひたすらジェットコースターを登り続けているよ。

いつかそれが降下しまうなんて絶対に無いと思えるくらい。

そう…やっぱり僕は君を愛している。


著:ちょちょい前田

『高森くん』

2.会えなくても愛



時刻は朝6時半、僕は教室に来た。何故ならばしおりちゃんが8時半に教室に入ってきて僕の隣に座るからだ。

約1ヶ月程前…シオリーヌ呼吸が通じない状況下に置かれて息が吸えなくなり気絶してしまった僕はシオリーヌ呼吸を越える呼吸法を模索した。
何度も実験を繰り返しては失神をして保健室に運ばれる事20日連続…クラスの奴らの僕を見る目もそうだがその噂が他のクラスにまで知れ渡り、いつしか僕は陰で「失神王」という通り名まで出来ていて周り中が敵なのでは無いかという錯覚に陥りながらもついに僕は見つけたのだ。

「新シオリーヌ呼吸」…それは毎朝6時半に教室に入り2時間まるまるしおりちゃんをイメージし続け、8時半にあたかもずっと隣に彼女がいたかのような錯覚を自分に持たせる…そうする事で自分の精神を保ちかつスムーズに登校した彼女の存在を受け入れる事が出来るのだ。
この呼吸法を身につけた事で朝練がある運動部の連中と同じくらいの時間に来る僕の事をまた周りが「無意味に誰よりも早く来る男」と呼んでいるが僕からしたら逆にそれを「しおり部」の朝練くらいの気持ちだと思えば天国だった。
何より6時半~8時半の時間にして2時間はしおりちゃんを受け入れる時間としてはむしろ僕は「短かった」と判断している。

そして周りがいくら「失神王」とか「無意味に誰よりも早く来る男」とかどんなに罵ろうがしおりちゃんだけはきっと僕の事を見ていてくれているから。

しおりちゃんはきっちりとした性格なので毎日1~2分のズレで教室に来るはずだ。
しかしその日は8時半を5分過ぎてもしおりちゃんは来なかった。
珍しいな…そう思っていたら時間はあっという間に朝礼になり担任が入ってきた。

「え~本日は池田さんはお休みです。」

ななななな!!!!なんと!!!!!しおりちゃんがお休み!!!!そんな!そんな事は無い!!!!天使に休みなんてあるわけない!!!

「そして今日のHRの時間は席替えだな、1ヶ月経つし。」



…嘘だろ…席替え?そんなはず…。
僕は魂が抜け落ちたように体中の力が抜けて愕然とした…。

「新シオリーヌ呼吸」を開発してからまだ5日しか経っていないのに…もう使い物にならなくなるなんて。しかもよりにもよって最後の日に天使はいない。あぁ…しおりちゃん、君は今何をしているの?フカフカの天使の羽で出来た布団でくるまって寝ているのかな?
この間車で迎えに来ておられた優しいお兄様が手厚く看病しておられる事だろう…なんて素晴らしい兄弟愛だ、天使の兄は天使、美しい。
出来れば今すぐに飛んで行きたいのですが残念ながら僕みたいな人間には天使のような美しい羽は生えておらず無力さを味わっています。悔しい、きっとしおりちゃんもこんな自分がいない席替えなんて許せないはず。ましてや僕と離れ離れになるなんて望んでいないはず。どうすれば良いのだろうか…。

…!そうか!席替えというのは席を替えてしまい、愛しの人と離れてしまう可能性が大きいが、また同じ席になる確率だって無い訳では無い!そう考えたらこの絶望的な状況でも一筋の希望が見えてくる。
もしこれが神が与えた試練だとしたら…逆を返せばここでまた天使と隣同士の席になれる事を『運命』と呼べるだろう。
僕は許せない…このたった1ヶ月で席替えをすると誰が決めたかも知らないルールに縛られる学校が!だから僕は絶対に死守するよ!天使の席を!君がいないなら僕が守らなければいけないんだね!よし頑張るよ!僕と君との幸せは誰にも奪わせない!

時は来てHRにて席替えのくじ引きの順番が回り僕はその番号を引こうとしていた。
しおりちゃんの席は休みという事で最後余った場所になるので結果は最後まで見えないが、大きな使命を託された僕はくじ引きを選ぶ指が戸惑いを見せた。

右…?左…?どれだ?どれだ?どれにすれば良いんだろうか…?
緊張の頂点にいる僕は後ろから聞こえるクラスメイトの「早くしろよ」という声など全く聞こえずに生死の境目を彷徨い続けていた。





目が覚めたらそこは保健室だった。
「高森くん目覚めた?久しぶりにまた失神していたよ君。」
保健室の先生の声で我に返った僕は慌てて時計を見たら時間は下校時間をとうに過ぎていて、他の奴らは各々の部活に精を出していた。
すぐに教室に戻った僕は自分の席を探した。

僕は一番後ろの窓際で、しおりちゃんは一番前の廊下側だった。
よりにもよって計算上延長線が一番長くなる距離に置かれたその席を前に、僕は今まで登り続けたジェットコースターが一気に急降下し、そのまま地面に叩き付けられて間に命を落とす自分を思い描いた。

しかしそれは僕が悪い、神が与えた試練に耐えきれ無かったのだから。
「おお神よ…。」

「待っててねしおりちゃん、必ず君との幸せを取り返してやる。」

そう誓いを立てながら早く1ヶ月経てと念じた。



続く






この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

また、当ブログに掲載されている文章等の無断転載はご遠慮下さい。
悪質な転載が確認された場合は、知的財産法(著作権法)に基づき民事訴訟となります。

Copyright (C) ORIHUS All Rights Reserved.