信玄 / 武田八洲満
- 著者: 武田 八州満
- タイトル: 信玄
- あっっ・・・ひかないでください。絵はこんなんですが、ちょびの一番好きな小説のなかのひとつです。
- ちょびは歴史小説が好きですが、中でも戦国時代の甲斐武田氏が好きです。
- 甲斐武田氏の物語には、ドラマを持った人間が多いです。一般的には親の追放、息子殺しなど悪名高く残酷なイメージがあるけれど、実際この上ないほど慎重で理知的な苦悩する人間・信玄。特殊で肩身の狭い育て方をされ、しかし嫡男の死で突然甲斐・信濃を背負わされてしまった勝頼。そのほかにも兄思いの信繁や、美少年長じて出世頭の(笑)高坂昌信、隻眼の謎の軍師・山本勘助など、誰を挙げようかと悩むぐらい。まあそれは徳川氏が武田氏を賞賛したからで、江戸時代には甲斐武田氏はかなりメジャーだったということもありますが、そういうことを語り始めると長くなるので置いておくとして。
- さて、「信玄」のお話をばいたしましょう。
作者の武田八洲満は、あまりメジャーな作家ではないようですが、4度直木賞候補に挙げられています。本作を含めた「武田三代記」のひとつ、「信虎」も1972年に直木賞候補になりました。苗字は武田ですが、甲斐武田氏とは何の関係もないそうです。1986年に亡くなられました。
みなさんは甲斐武田氏に関する小説や漫画を読まれたことがあるでしょうか? ない方も、もしかしたらNHK大河ドラマで「武田信玄」を見られたことがあるかもしれません。
たいてい冒頭は武田晴信(のちの信玄)が悪逆非道な父・信虎を追放するあたりから始まります。「妙法寺記」という書物に「信虎平生悪逆非道なり。国中人民、牛馬畜類ともに愁悩す。」とあり(牛馬まで悩むって・・・どんなやねん!)、信虎を追放したことで「人民悉く快楽の笑いを含む」となっています。それをうけて、信玄による信虎追放は甲斐の国人(独立した勢力を持っている豪族のようなもの?小山田氏なんかはその筆頭)に歓迎され、国人たちは信玄に喜んで従ったというようなものが多いです。
武田八洲満の「信玄」はそこが大きく違います。信玄の甲斐の統領としての一生は、国人たちを苦心して纏め上げることだったということになっています。そういう考えで信玄の行動を読むと、今まで読んできた角度とは全く違った信玄像が見えてきて、とても面白いです。しかも、ほとんど矛盾がない。
若々しく、自信にあふれたさわやか青少年(笑)・武田晴信もかっこいいですが、21歳で父親を追放してからずっと苦悩の連続だった武田晴信も、ちょびには人間臭さが感じられて、かっこいいです。
もう一点。
この物語は、信玄の物語であると同時に、農民たちの物語でもあります。
妻を亡くし、墓石を背負って戦に参加する男。
幼子をかかえ、もらい乳をしてあるく男。
信濃から甲斐へ連れてこられ、甲斐で生きることを余儀なくされた人々。
重い人間ドラマではありません。
ほとんど台詞はなく、解説書だと言っても通じそうな感じです。合戦もほとんど描かれていません。
でも作者の、人間を見つめる目が、この作品を他のどの甲斐武田氏を題材にした作品よりも、人間を感じさせます。
- 著者: 武田 八洲満
- タイトル: 信虎