こんにちは。ちょびでございます。


100人目のアメンバーくりくり様にリクエストを強要です!

くりくり様、本当に有難うございました!



【恋する愚か者シリーズ】


【恋する愚か者シリーズ】


悩みの音  → 愚か者の幸せ(前編) (後編)  の後くらいのお話です。

※本館「陽のうらうらと」に飛びます





■撫で愛でる未来(後編)(リクエスト)



「おっかえりなさーいっ!」


ドアを開けた途端、キョーコが走り寄ってきて蓮に抱きついた

キョーコが待っていてくれたことに緩んでいた蓮の顔は、彼女からの抱擁にさらに崩れる。


抱擁、と言っても何かにつけて勢いがあるキョーコのそれはタックルに近い。

初めて喰らった時は油断していたので、キョーコの頭が絶妙な場所に激突してきて猛烈に痛い上に息ができなかったが、それ以上の喜びに心が満たされていくのを感じたものだ。


そのことを社に話すと

「痛覚までも操れるとは…キョーコちゃん。すごいな」

と何やら訳の分からないことをブツブツ言っていたが、蓮としてははただ誰かに惚けたかっただけなので放っておいた。



「ただいま。キョーコもおかえり」

「はいっ、最上キョーコ、無事帰ってまいりました!」


ピシッと敬礼するキョーコの頬を掌で包んで感触を楽しんだ後抑え込む


「焼けたんじゃない?駄目だな。女優さんが」

「ひゃけつぇましぇん!ひゃんとひにゃけどめにゅってましゅた」

蓮の手の間で必死に主張するキョーコの変顔を堪能してから、軽くキスを贈る。

「冗談、冗談、焼けてないよ」

キョーコに小さな紙袋を手渡した。

「これ、社さんから。」

「あ、ここの和菓子、美味しいですよね~。お茶入れます。何がいいですか?」

「濃いめの緑茶がいいかな?着替えてくるよ。」

「はーい」


社の調整のおかげでまだ夕方といっても早い時間。

ソファーに並んで互いのこの数日間について報告しあう。

和菓子を食べ終わって、2杯目のお茶を飲んだ頃、キョーコが「お土産です」と手渡されたもの


薄い長方形

ラッピングはキョーコ自身の手によるもののようだ。


「ありがとう。なんだろ?開けていい?」

「どうぞ、どうぞ」

そういうキョーコの顔は蓮の反応をワクワクしながら待っている。


キョーコにお土産を渡すとき、自分もこんな顔をしているんだろうか?

くすり、と笑いながら包みを開けた


目に飛び込んできたのは…



鮮やかな色彩で描かれた海の生き物たち



「…ファイル?」


それは沖縄を代表する水族館のポケット式ファイル


「敦賀さん、めくってみてください。」

キョーコに促されて、表紙をめくる


「これって…水族館のガイド?」

「そうなんです!水族館の中でもらえるガイドを入れると、生き物図鑑が出来るってやつでして…お金は無いので身体で補おうと集めてきたんです!」

「…嬉しいよ」

身体ではもう充分に…と不埒な考えが浮かびかけて、慌てて意識をファイルに戻す。


「本当に嬉しい。こういうの結構好きなんだ」

「ですよね!敦賀さん、ネイチャー系の番組やってたらよく見てるからきっと喜んでいただけると思ったんです!」


よく見てくれているな。そう思えて浮かれるままページをめくる


大きなエビが、なんとも大味そうに思えただの。

チンアナゴが妙に可愛かっただの


キョーコの解説がついて益々楽しい


次々とページをめくって…


「あれ?」


8枚目となるガイドが入ってない。


「…それはですね」

8番のガイドを取り忘れていることに気付いたのはもう出口近く

どうやら暗い上に水槽に気を取られて見落としていたらしい。

戻りたかったが、なにぶん修学旅行だ。

時間も決まっているし、グループでの行動が義務付けられている。


「不完全なものですいません…。他に思いつかなくて」

「いいよ。いいよ。他9枚はあるんだし、充分楽しめる」

「…」


キョーコの性格からいって、蓮の反応は見たかったが、不完全なものを渡したことに納得がいかないのだろう。

重ねてフォローしようとすると


「今度、8番のガイド、2人で取りに行きましょう!」


「え?」


「すぐにとは言いません!でもリベンジしたいんです!付き合ってくださいっ!」



言い募るキョーコと、ファイルを交互に見つめた。



“今度”


“二人で”



「ダメですか?」


「いや…行こう。…うん、今度は2人で」


「約束ですよ!」


その時は一日かけてゆっくり見たい。

お昼は大水槽の横にあるカフェでジンベイザメを見ながら食べて、シアターも見てみたい。


キョーコの話に頷きながら、思う。



つまらない男だと落ち込んでいた。




でも、それなら


今度は2人で新しい楽しみを探していけばいい


互いの仕事も立場もある


そんなすぐには無理かもしれないが、それをかなえるために努力すればいい。



だって、キョーコは言ってくれる


いつか、蓮と一緒にと



おぼろげかもしれないが、蓮との未来はキョーコの中に存在している




「あ、もうこんな時間ですね。夕飯の仕上げしてきます」

敦賀さんは待っててください、と、キョーコがキッチンに向かう


キッチンから聞こえる様々な音に混じるキョーコの鼻歌


それを聞きながら、蓮は微笑んで空のポケットをそっと撫ぜた



そこに入るであろう



2人の未来を


そっと…優しく…愛おしげに…撫ぜた。




(FIN)



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くりくり様のリクエストは「恋する愚か者シリーズ」

頻繁に登場するお土産を楽しみにしてくださっているという事で…

なんだか詰め込んでしまいましたが、果たしてお気に召していただけるのか?


ちなみにキョーコの修学旅行はポチリちゃんと同じグループだったり…



くりくり様、楽しいリクエスト有難うございました!


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