母と叔父は、親なし金なしで育った。

残された歳の離れた幼い兄妹2人。
たった2人だけの家族。
よくある不幸話なのだが、
2人のエピソードは、
両親とは死別ではないゆえの苦労話であり、
同じ別れならどちらが良かったのだろうかと思える物が沢山ある。

幼児期から成人するまで、
恵まれた時代に生まれた私からすれば、
明らかにしんどかったであろうと思える
物語の中を2人は実際に生きてきた。

叔父は幼い未就学児の妹を自分の力で育てるには、まだまだ力不足だった。
母と共に、お寺や親戚中をあちこちとたらい回しにされた時期を乗り越え、最後には実母の末の妹の家に落ち着いた

そこは決して裕福ではない農家。
同じ年頃の子供が3人いた。
朝から晩まで働きづめの叔母。 
食べる物も少ない状態で
他所の子供を預る余裕はなかったはずだ。
それでも周囲の反対を押し切り、
2人を引き取ってくれた。
その叔母の恩に報いる為にもと、
叔父は家事や畑仕事をこなした。
祖父のしでかした行いがあり、
今まで預けられた先で疎まれ罵られた。
人では無いような扱いを受けた。

働き者で優しいこの叔母を、
叔父は姉ちゃん、姉ちゃんと慕い、
その恩を決して忘れていない。

叔父は自らの置かれている立場を理解し、
誰が付けたわけでもないのに、
家庭内での優先順位を心得、
残り物があれば有り難く頂戴するが、
自分よりも妹に。
というスタンスで行動した。
子供らの中で1番最年長だった叔父は、
そんな立派な長男だと、この叔母から聞いた。
当時はとにかく貧しくて、やってやりたくとも
可哀想な思いしかさせてやれなかったんだ。
この叔母は言う。

私にとって祖母の妹にあたるこの叔母についてはまた別に記録したいと思う。

叔父は食いぶちを減らす為にもと、
中学入学と同時にお肉屋さんで住み込みのバイトを始め自立した。
少ない稼ぎの中から、学費を出し、生活をし、母に小遣いを渡し、叔母へ仕送りをし、
叔父は自分の力で大学まで出た。

そんなあんちゃんの教えもあり、
背中を見て育った母。
今度は母があんちゃんと同じ様に行動した。
あんちゃんの助けも借りながら、
母は高校まで出た。
叔母の家は高校卒業と共に巣立った。

寝床があって、学校にも通え、
あんちゃんが居て、可愛い妹がいる。
そんな自分達はとても幸せ者だと叔父は明るく話す。

遊ぶ事なく常にお腹を空かせ、
寝る間もなく働き、
学業までもこなす。
2人とも成績優秀でスポーツ万能。
何でも1番だったという。
自慢であり大好きなあんちゃん。
可愛くて立派な妹。

共に幸せに暮らせる日を目標に、
お互いを思いやり生きてきた、
そんな母とあんちゃんの絆はとても強い。