
........目の前の愛しい愛しいジュンちゃんが、とんでもないコトを言い出した。
「....フツーに考えて、ムリでしょ。」
「なぁんでっ!!! なんで即答するかっっ!!!」
「あのね? あと3日でタイじゃなかったっけ? あーーー、ちがう、3日後にコンサートってことは、2日前には出発? その出発ってつまりは明日でしょ?」
「...う?」
天井を見上げて『そうだったっけかな?』みたいな顔して考えこんじゃってるし...
「あっっ! あぁぁぁ.....そだ...たね...」
あからさまに、ショボーーーンとすると、上目遣いで私を見る。
「マキ、マネージャーみたいだね...僕よりも僕の予定わかってる。」
「あたりまえでしょ? "熱烈シアペン"はねぇ、ブログ巡りは日々の日課。ううん、まずは朝いちばん、起きる前にチェックしてるし!」
ドヤ顔する私をフシギそうに見るジュンちゃん。
「スッゴいだなぁ~~~...でも、僕に聞けばいいのに、なんで?なんで聞かない?」
「....把握しきれてなさそうだから?」
「ハアク?ハアクって、ナニ、どういう意味? ハアク...ハ..ク...ハク..吐く⁉」
「いや、別に吐く話はしてないから。 把握...って、今だって明日の出国忘れてなかった? 覚えてなかったでしょ?」
「うっうぅぅ~~~...たっまたまっっ!!! たまたまだっからぁっっ!!! いつもはちゃんと、しっかり覚えてるからぁっっ!!!」
「ま、そーゆーワケで、今日一緒に日本行くだなんてムリなコトを言わないのっ! わかった?」
「うぅぅ...むぐぐ.....」
そうなのだ。
この目の前の愛しいジュンちゃんってば、恐ろしく無謀というか、考えナシな提案をしてきたのだ。
帰したくないから、一緒に日本についていくって。
確かに、そう言われて、嬉しくないワケがない。
ま、とはいえ現実的に、もしも時間があったって、そんな無謀なコトはこっちがお断りするけど、でも、キモチはものすごく嬉しい。
プゥ~~~っとほっぺた膨らませて拗ねてるジュンちゃんを、後ろからソッとハグする。
「ジュンちゃん? うれしいけど、また今度にして? だって、せっかくならゆっくり温泉とか行ってみたいし♥ ね?」
後ろから見てわかるぐらい、シュゥゥゥ~~っとほっぺがしぼむと、ガバッと振り返りざまにコーフン気味に迫られた。
「おんせん? あーーっっ、いいなぁ~~おんせん♪ 露天風呂?アレとか、入りたいかなぁ~~~♪」
「うん? あはっ、そーだね、温泉ねw」
「マキと混浴だぁんっっ♥ うきゃん♥」
なんか勝手に盛り上がってるけど、ま、いっか(笑)
「だから、そーゆー『のんびりお休みが取れる時』まで、ちょっとだけガマンだね?」
口を両手で隠して、足をバタバタさせてたジュンちゃんの動きがピタッと止まった。
「...ぃやっぱ、今日帰っちゃう? 明日一緒に空港から飛ぶじゃ、ダメ?」
「ンも~~~...困らせないでよぉ~~」
「ダメ?」
「次の休みにつなげるためにも、明日は会社行っとかないと...ごめんね、わかって?」
「うぅぅぅぅぅぅん....あぁぁぁ....なぁんで僕たち、ゆっくりできないだかなぁ....はぁぁぁぁ......」
「ホントだねぇ...『もう飽きた』ってぐらい、一緒に居てみたいよねぇ?」
ホントに、ホントに何気なく言ったひとことだった。 ただ単純に、ううん、純粋に『そう感じる熟年夫婦ぐらい一緒にいられたらいいのに』ってイミだった。
言い方が悪かった? コトバが足りなかった?
突然、ジュンちゃんが怒りだした。
「マキにとったら、僕とのコトはそんなていどなの? 長くいたら飽きるの? 飽きたら、捨てるの? そしたら、次の新しいトコにいくの?」
な、なに?
「....え? なんで? そんなことゆってな..」
「ゆったじゃん!!!『飽きる』ってゆったじゃんっっ!!!」
なんで?なんで怒ってるの?
「え? ゆってな..」
「ゆったっっ!!!」
わっけわかんないよ!!!
「ゆってないってばっっ!!! てか、そんなイミじゃないってわかるでしょ、フツー!!!」
「わっかんないっっ!!! わっかんないよっっ!!! だって僕日本人じゃないしっっ!!!」
「私のほうこそ、わかんないっっ!!! なんでジュンちゃんがこんなヒドイこと言うのか!!!」
「ヒドイのはマキじゃんっっ!!! さびしい僕のキモチ...ココロ...とか、そゆことぜんぜんわかってないしっっ!!!」
「わかんないっていうジュンちゃんがわかんないよっっ!!! ごめんね、日本人で。でもさ、しかたないでしょっっ? 私は韓国人にはなれないんだもんっっ!!!」
もう、メチャクチャ。
自分でもナニを言ってるのかわかんなくなってた。
ただ、ジュンちゃんに言われたコトバがショックで、そんなふうに私をみたんだって思うと悲しいやら腹立つやら.....
くわえて、あとわずかしか一緒にいられない焦りと、またしばらく寂しさをガマンしなくちゃならないっていう切なさと、ホントは帰りたくないってキモチとか、全部ごちゃ混ぜになって....
キレるみたいに叫んでた....."みたい"、じゃない。完全キレてた。
すると、ジュンちゃんはジュンちゃんでキレてるせいだと思うけど、いっぱいいっぱいでコトバが追いつかないのか、途中からこともあろうに韓国語でなんだか私に言ってきた。
もちろん、状況考えればだいたいどんなコトを言ってるのか想像はつく。
だけど、ここで韓国語使われてるってコトが猛烈に悲しかった。
私が理解できないことも、もうどうでもいいってコトなの?
自分とジュンちゃんとの距離を、目の前に突き付けられてるような、そんなふうにしか思えなかった。
だから。
お互いにワケわかんなかったから。
冷静とは真逆な状態だったから。
ふたりとも、おかしかったから。
だから.....
気づいたら.....
「やっぱり、ムリがあるのかもね、私たちって。」
言ってしまった。
いちばん言いたくないコト、言っちゃいけないコトを言ってしまった。
私のコトバに、一瞬クシャっと顔を歪ませると、うつむいてため息をひとつついたジュンちゃんが、顔を上げてまっすぐに私を見た。
「それがマキの答え? ....そか。ならしかたないね。....うん。...しかた、ないよ。」
「.......」
ワタシはナニを言われてるんだろう?
頭真っ白のまんま、ジュンちゃんを見つめた。
「たしかに、僕たちなかなか会えない。会えないどころか、まだちょっとの時間しか、一緒にいられてない。いちばんカンタンなコトがこんなに難しいんだから、ムリがあるんだよ...うん。ムリが、ね。」
ジュンちゃんは、ナニを言ってるんだろう....。
「しばらく、離れよ? 『別れる』って簡単に答え出さないで、離れてしばらく考えよう? アハッ、離れてって..まぁいつも離れてるか、いつものコトか、アハッw」
.....そか。『離れたい』って言われてるのか、そうか。
ふと、気付くと、もう空港に向かわなければならない時間になっていた。
「ゴメン。今、とても送っていけない。タクシー呼ぶけど、それでダイジョブ?」
....コクン。
私がうなずくと、ジュンちゃんは電話をかけ始めた。
ナニが起こってるのか、どうしてこうなっちゃったんだかさっぱりわからないけど、とにかく帰る支度をしなくっちゃダメらしい。
無意識に身体だけが動いて、荷物をまとめる。
私が支度を終えたことを確認すると、スーツケースを押しながら、玄関に向かう。
その背中を見ながら後ろをついていくうちに、どんどん胸が苦しくなっていく。
普段は強さをあまり感じさせないジュンちゃん。
そのジュンちゃんが、有無を言わさぬ決意を全身で発してる。
もっと、もっと何か言わなくちゃ。
このまんまじゃ、ホントに終わっちゃう。
ワタシはそれでいいの?
後悔....もうしてるよね?
なんでこうなっちゃったの?
何か言わなくちゃ、はやく、はやく言わないと!!!
「あ....あの」
「エントランス出たトコに、タクシーきてるから。電話で空港までって言ってあるから、何も言わなくてダイジョブだから。」
「あ....う...ん...」
「.....気をつけて。ここで、いい?」
玄関を開けて廊下に出ると、私にスーツケースを渡す。
冷たく感じるのも、私に対して一線引いたからだね、きっと。
「じゃ。日本に着いたら、LINEだけは入れて? 心配だから。」
あぁ....それでもまだ心配してくれるんだね。
『パタン』
ドアが閉まると、廊下にひとり取り残された。
.....終わっちゃったんだ。
長い長い夢が、たった今終わったんだね。
目を覚まして、自分の居るべき場所に帰らないと。
依然として頭真っ白のまんま、フラフラしながらエレベーターに乗り込んだ。
それから、まったく覚えてないんだけど、気づいたら自分の部屋のベッドの中にいた。
そだ、着いたって、LINEしないと。
『いえにつきました』
それに対するジュンちゃんの答えは、既読がついただけだった。
***スミマセン...富士急ハイランドもビックリな急降下になっとります。
しかしまぁ、やたらとピンチに襲われるふたりだなぁ....( ゚Å゚;)