前の病院で、拒食症の患者さんたちとカウンセリングをしていました。
カウンセリングを通してわかったことは、拒食症の人たちは、受け答えは流暢で、なんでも言い返せるんですが、人の言葉に耳を傾けることが苦手です。
その理由は、心の中が不安でいっぱいであるということ、人の言葉を聞くというのは、けっこう集中力が要るけど、話すのはテープレコーダーのように口先だけで話せるということ、栄養不足であることだからだと思います。
本当は、すごく寂しい人たちです。分かってもらいたい気持ちも持っています。でも、うまくやり取りができないのです。
だから、最初に大事なのは、彼女(彼)たちのこころを解きほぐす作業です。けっして、無理強いはしないのです。
ただし、今の現状から抜け出すには、時として、病気に対してプレッシャーをかけることが必要です(見かけ上、患者さん本人にプレッシャーがかかる場合があります)。
それは、彼女たちは、抜け出したいけど、抜け出すのが怖いという、葛藤(かっとう)状態にあるので、その状態を変えるには、本人も含めてですが、家族や、関わる治療者が、団結して、エネルギーをかけて、言わば病気を追い出す必要があります。
それが、本人にとってつらい作業となるときがあります。でも、それは、大切な作業なのです。
病気でなくても、生きていく中でつらいことがあることと、同じだと思っています。