本番3日目終了、たったいちど
最初の本番を迎えてからやっと本番3日目。
随分長いことこのオペラに携わっているような気がすると同時に残るところあと3回しかないのかと思うと寂しい。
2日目の公演がとてもよいものになってお客さんの反応も良かったのに対し、3日目は平日の昼間だということも加わって中だるみしたのか、いろんなことが上滑りしているような気がした。
音楽も声も。
ダンサーたちもどこかぽかんとした隙間を感じながら演じていたんじゃないかな。
必死で取り返そうとしてもどうしてもすかすかな空気が消せない日がある。
きっとお客さんもそれを感じていたのではないかという気がする。
万全に準備をしてもこうしてぴったり満ちることができないこともあって、不思議なことにそのリズムは舞台全部を支配する。
もちろんさすがそこはプロで、大きな空隙にはならないのだけれど。
もう自分の踊るところは全部終わってあとはお客さんに挨拶をするだけという段になって私は下手袖からラストシーンを見ていた。
袖から照明に当たっている歌い手さんを見ていてふと、ここにいるひとたちはみんなこの今日しかないこれだけのことのために集まっているんだなあ、という思いにとらわれた。
この物語もつくりものだし、この舞台のうえのものも全部つくりもの。
1ヶ月という稽古を重ねて、たった6回、そのことを演じるためにここにいる。
今日見に来てくれたお客さんはもうこれっきり、この場所で逢うこともない。
今日演じたこのことは二度と再現できない。
まだ3回あるけど全てが同じじゃないから。
まるで道を歩いていて知らない誰かと一瞬すれ違ったくらいのあっというまの、なんの現実的な役に立つでもない、物語をみせるということ。
そのためだけに私たちはここにいて、そのことをみんながやり遂げようとしているんだなあ、と。
そうしたら全ての横顔の輪郭がとてもきらきら見えて、いとおしいような気持ちになった。
もしかしたら今日はうまく声がでなかったなあとか、バランスがとれずにぐらぐらしちゃったなあとかいう物思いがその頭の中につまっていたかもしれない。
でも最後までどうにか折り合いをつけてそこに立ってる。
レベランスのためにお客さんの前に立ちながら共演者や客席を全部できるだけ見回した。
笑ってるひとも神妙な顔をしているひとも表情からは心情の読み取れない人も、去ってゆく後姿も、立ったけれど扉付近で拍手をしてくれているひとも、長く頭を垂れているカラフさんも(カラフさんは今日珍しくあちこちを歩き回っていた。どんなことを考えていたんだろう)。
そうして眺めていたら急に大粒の涙がひとつだけぽろっと流れてびっくりした。
舞台上なのにどうしたんだろうと手でごしごし。
次の本番は10日。
きっといいものになるはず。
