プノン・バケンからの夕日
夕日を眺めるスポットとして有名なプノン・バケンの丘へ。
徒歩でいける道と象に乗れるルートと別れている。
象にのってみたい気持ちもあったけれど15ドルと高いし、それに山道を歩くのは久しぶりなので徒歩を選ぶ。
このときには夕日にばかり気をとられていたけれど、今調べてみるとこの遺跡はアンコール建築では独特のバケン様式として知られるとても重要な遺跡らしい。
最初の首都ヤショダラプラにおいて、その中心に聳える須弥山とみなされたのがこのプノン・バケンの自然丘陵だった…とのこと。
見渡すかぎりあまり高い山がなくてこの60メートルほどの小山からは驚くほど遠くまで見渡すことができました。
しかしその地形条件はカンボジア内戦時に軍事拠点として利用されていたんだって。
神殿の天辺が火薬の倉庫になったり、周囲にも多くの地雷が埋設されていたそう。
頂上では象も象つかいもひとやすみ。
鼻をぶらぶらさせていた。
こうして、どんどん壊れていっちゃうのかな。
壊れてゆくもののその過程をみるのは好きだけれど、その先にはそのことすらを見られなくなる消失点がある。
それも含めて、なのかな。
むこうをみすかす風景をたくさん撮った。
ここに登ってくるまでの階段がとても恐かった。
蹴上げが脛の高さくらいあって、踏み面が足の横幅くらいしかない。
天にいち早く昇れるように、急なんだって。
でもそれにしても。
みずみずしい大地がずっと見渡せた。
ドイツは地殻が分厚そうで確固としていて、オランダはうすっぺらい吸い取りシートのような土地だったことを思い出す。
カンボジアは熱を含んだ湿気が地面に降りてしまったみたい。
たくさんのひとが夕日を見に来ている。
いろんな国のことばが飛び交う。
可愛かったから、近くにいた男の子を。
太陽を見るのにこんなにひとが集まるなんて、変だなあ。
太陽はひとつだから自分の国で見ようと昼間浮かんでいるのを見ようと同じものなのに。
けれどみんなほっぺを同じように夕焼けの色にぴかぴかさせながら、ずっとその姿を待ち望んでいる。
写真を撮るって不思議で、そこに写した景色よりもなによりも、その場所その瞬間がからだのなかに収められる。
写真は単に記憶の引き出しの見出しにすぎない。
左の方にいたはしゃいでいた男の子たち、
一緒に日没を待っている肩に感じる体温、
石垣から足をぶらぶらさせたこと、
一日のおわりの匂い。
曇っていたことと帰りの山道が暗くなると危険なことで完全に日が沈む前に山を降りる。
小さな山なのにみるみる山道が真っ暗になってゆく。
工事の音みたいな、キーンというかビーというか、ギャーンという音がずっとしていて、何かのサイレンかなあとずっと思っていたらガイドさんが「あれは蝉の鳴き声だよ」と教えてくれた。
まさか!あんな人工的な音が蝉のわけないよ、と、冗談だと思って半笑いしていた。
でも旅の途中何度もこの音を聴いたけれど、やっぱり蝉だったみたい。
姿を見たらたぶん鉄でできてるんじゃないかなあ。








