睡蓮
睡蓮にこころひかれる。
いつからか覚えていないけれど。
おととし川村美術館に行ったときよりは前。
カンボジアのシェムリアップ空港に着いたときにそのあたたかく湿ったかおりをかぎながら睡蓮のことを強く思った。
ちょっとした中庭がついていてそこにちいさな池があって、いかにも睡蓮がありそうだったのになく、ひょろっと草だけが伸びていた。
ホテルの近くの川に睡蓮を見つけて、夜も朝も撮った。
思ったよりも見かけなくてどうしてだろうと思ったら最終日にこの茶色い川にざぶざぶ頭から入って花を摘んでいる男の子がいた。
きっとお供えするのだろう。
そうか。
日本に帰ってきてしばらくして、睡蓮の夢を見た。
内容は忘れちゃったけれどやっぱりあたたかく湿っていて、でも気温は低くあたりは夜か夜明けの蒼さだったと思う。
葉に水滴が浮かぶような霧のなかだったような気がする。
息をするたびに肺に水分がしみこんでいった。
どんな夢かわすれたんだけど、その睡蓮を私はからだのどこかにずっと抱えている。
何故かちょっとだけ、胸がきゅっとする。
だからきっと水滴と一緒に花を吸い込んでしまったんだろう。
