誰もいない動物園
誰もいない動物園を歩いた。
もうチンパンジーも象もきりんも寝床に帰ってしまったあとの。
ひととすれ違うことがだんだんなくなって、追い越されることもだんだんなくなって、おひさまがじりじりと遠くなる。
割れる寸前のしゃぼん玉の表面みたいな、はかない金色に前髪が照らされる。
急にがらんとまわりの空気がひろがって、樹と、それを見上げたときの影ばかりが追い掛けてくる。
誰もいない公園が好きだな。
はしゃぐ声であふれる公園もうきうきするけれど、見渡すかぎりがわたしのもの、のがらんとした、なんのためでもない場所。
陽が落ちるにつれ色の種類がどんどん少なくなってゆく。
ただの光のグラデーションになる。
空だけが色彩の種類を増やして。
デンマークの公園をひとりで歩いたときにはずっといろんな白を見ていた。
頭のなかでとりとめもなく、誰にというわけでもなく、問いかけが尽きない。
けれど隣にひとがいれば、私はその色に沈み込むだけじゃなくてぴょんぴょん飛躍することができる。
樹の影と骨は似ているね、と突拍子もないことを口にして、ただ微笑むことも。
