ゆり、エーデルワイス、表裏
あるひとが車両にはいってきたらふわっとゆりの香りが漂った。
香水じゃなくてまるで生花みたいなみずみずしいはかない香り。
カサブランカのような豪華さはなくて、野で雨に濡れたあとのような。
エーデルワイスを見てみたい。
ちゃんとごつごつした山を登って。
エーデルワイスってずっと青い花だと思っていた。勿忘草のような色合い。
イメージとは違ったけれど写真で知ったふわふわの花びらをこの目で見たい。
この世に生まれてきた瞬間に死が決定づけられるというこのうらおもてはきっと、生きているあいだじゅうつきまとう。
そうして生まれてきたんだからそこに揺られていいのだろう。
生きている間に何回も生まれ変わること。
それは私と双子のあいだだけの秘密ではない(どのように、かは私だけの秘密をそっと共有したけれど)、そのことを知らされてにわかに世界が横長につながった。知らなかったわけではないけれど。
その瞬間はまさに『2001年宇宙の旅』のあの最後の、時空の旅のようだった。
ゆりの香りは相変わらずつづいている。
その不変を不思議だと感じられることがありがたい。
変わらない、のは咲いているゆりじゃない証拠だから。
