色の終焉
ぶあつい靄が月を覆う。
誘われるみたいに空の高いところのかおりを嗅いでみる。
水を含んで重たい雲のにおいがする。
明日は雨になるのかな。
木曜日は雨の日が多い。
あめふりもくようび。
秋のはじまりの空の天辺のかおりを思い出そうとするけれど、頭蓋骨の真ん中を突き抜けるような触感しか思い出すことができない。
夏が終わって秋のほんのはじめの、ほかのあらゆるかおりを通過しないと辿り着けないのかもしれない。
ふと目線をおとすと、藍色の夜のなかではなみずきの鮮やかさがぐっと目をとらえる。
暗やみのなかの色にひかれるのはどういうゆえんなのだろう。
北村道子さんの『衣裳術』のなかにある
「服も深く黒染めするときは色んな原色を加えなきゃいけない。そうじゃなきゃ実は本当の黒を表現できないの。黒は色の終焉なのよ」
ということばを、ふとおもいだした。
