memo/蒼い森
気付くと緑のかおりがした。
朝の露に濡れた緑と土のかおり。
とんがった葉や丸い葉。産毛の生えた葉、枯れてくしゃりと抵抗なく平らかになる葉。
まだ虫は眠っている。
まだ…?
もしかしたら今眠りに就いたところかもしれない。
呼吸で薄まった霧のむこうに蒼白くひかるものが見えた。
引き寄せようと手をのばすとそれはわたしの手だった。
体温を、思い出した。
腕が重い。
この霧をすべて集めて、率きつれてきてしまったように。
あきらめる。
すると腕は記憶をたよりにまた、霧のなかに潜っていった。
引き抜くけれど記憶を捨てることができない。
けれどその記憶はひそやかでとても踏み込むことはかなわない。
裂かれる寸前で、霧を分ける。
あらわれた肌を確かめる。
空白の螺旋に吸い込まれ、くぐり、消えた軌跡を実感しようとする。
けれどそれは、夢の中の時のように放てない。
重くはない。ただ時間がかわらないだけだ。
繰り返される音に気付く。呼吸にしては早く、鼓動にしては軽い。
耳を、掻き分けるように、またはじめから気付く。
記憶は螺旋のように積み重なってゆくけれどむずがゆいノイズが混ざることを止められない。
これは夢なのかもしれない、と幾度かのクリカエシに呟く。
金のシーツに頭を預けたのはいつのことだっただろう。
