『聖地へ Light&Shadow』/久保田光一 | アマヤドリ

『聖地へ Light&Shadow』/久保田光一


願えばわたしは何にでもなれるしどこにでも存在していられる

あの眺めを今呼吸することもできるし
あの音を聴いて顔をあげるあのひとを想像することも

おもいをはせるって、
そういうことなんだな

時間も場所も
もしかしたら知らないものにさえ
ゆきつくことができる


***


この本をくれたひとに、私には屋久島の血が流れているんだよって言ったことがあっただろうか。
まずはじめにそこに驚いた。
うん、たぶん言ったのかもしれない。
けれどこの本を選んでくれたのはそこから辿り着いたのではないような気がする。

深い苔やまっすぐに水にうつりおちてゆく細い杉の木立ち、
霧にいぶされた土からたちのぼるあたたかいかおり、どこかで枝が落ちる音。
根がすいあげる水のおと、ぎりぎりと擦れ合い割れる幹の乾いたひびき。

一度も訪ねたことのないところなのに、ここにはなにかがとくとくと流れている。


大きな樹にまきついて耳をつけて、きいてみたい。
指先がなじむまで。
ほおがしっとりと濡れてくるまで。
久保田 光一, 小澤 征良
聖地へ―Light&Shadow