モネ展/くすんだプリズム
モネと私は誕生日が同じ。パステルカラーの印象派、というイメージしかなくてそんなに興味もなかったはずなのにこのごろむくむくとちゃんとみてみたいという好奇心がわいてきて、きっかけをもらった今日、みてきた。
みてよかった。
いくつか好きになった絵があった。
その前に立つと驚くくらい、私のなかにあるいつかどこかの風景や音や匂いや気温や風がよみがえった。
何度もたちつくして深く呼吸をする。
どうしても離れがたかった絵があった。
セーヌ川の夜明けを描いたもの。
モネはまだ暗い明け方3時ごろからイーゼルを立ててその景色を何枚も描いたらしい。いろんな天候の、いろんな時間のその空の半分を濃い林に覆われた川。
明けゆく空はモーブ色から金色、みずみずしい空色に変わってゆく。
それがひとしく水面に映って鏡のようなんだけど、その境は朝靄が低く漂い、区切っている。
いつかの年明けにこんな靄をみたことがあったなと思う。
足がびりびりするくらいにその情景を想った。
あのときは一睡もせずに迎えた朝で、夜中降った雪が一面に積もっていた。すべらかな状況が、しなやかに洗い流されたその景色に絡めとられてしまった。
茫然とするような遠さだったことを憶えている。
どうしてもこの絵から離れたくなくてすべてを観おわってからも何度もひきかえしてそこに足をとめた。
近くでみてその色の端っこの筆の運びや色の変わり目の幅やかたちすら覚えてしまいたかったけれど、やはり目を離すとそんな詳細は瞬間に立ち消えて、なにも残ってくれなかった。
左の、ものすごいとおくから、もう角を曲がるあたりからこの絵をみるのがすきなことを発見した。
できればこれを持って帰って毎日眺めてみたいと思った。
時がたって朝日がのぼり、林に光がはいるまで。