“b”et... | アマヤドリ

“b”et...

視界のすみずみまでをおおっている空は小さな爆発をおこし、いくども流れる。
一瞬を刻むようにしてそのありかを探ろうとするけれど、ひとつも、いちども、つかまえることができない。

さっきまで波は耳を洗っていたけれど深く潜ることにしたので今は静かだ。
潮の呼吸なのか、耳の底の血液のおとなのかわからない。音のすべては今見えている青い空気の流れや、よぎる鳥の羽音とはまるで無関係なのだ。
そのことをなじませてゆくと自分のからだだけがすっぽりとこの水と空気からくりぬかれたような気持ちになる。

こんなに広くまあるい空を初めて見た。
さかなはいつもこんなふうに空を感じているのだろうか。
大きすぎるものやたくさんすぎるものを見るとかなしくなるのはたったひとつだけの自分を知るからだろうか?

あおくそまってしまう、とおなかのなかがしんと冷える。
どこまでも深く足先がおちてゆくような気がする。根が底をめざすように、細く分岐しながら。
闇のなかを、冷たさをかきわけて青白くとけるように。

まるでばらばらに漂い続けているようだ。
わたしが触れているものはなに?
わたしのひとみに映るのは?
なにを語ろうとしてくちびるは震えるのか?

ちからまかせに揺すられ、なんどもなんども洗われて奪われる。
からころと音をたてる真っ白な骨になってしまう。

全部息を吐ききると、啜り哭きのようなふるえとともに慌てた空気がさしこむ。
わかってる、すぐに安心するのは無理だ。
やみくもに平面をよそおって鈍感へ陥らなくてもいい。

そのまま、
震えながら呼吸する。
たぐりよせる必要もない。
泳がせておけ。

無防備さに怯えて泣けばいい。


透明になるまで。