熱海/こだま
日本の鉄道はなんて親切なんだろうなあ、って思う。
遅れないし、アナウンスはばっちりしてくれるし、なんと言っても当たり前だけれど表示が日本語なんだもん。どこにでもいける。
新幹線に乗ると斜め後ろの席のおばあちゃんが「富士山はどっちに見えますか」と駅員さんに訊ねていた。ちょうど私が座っている右側の座席の窓から見えるみたいだったからよかった、と思った。
おばあちゃんはいつの間にか私の真後ろに移動してきていた。
新幹線はとても空いていたから私とおばあちゃんがこんなに近くに座っていること、ふたりして富士山をこころまちにしていることがなんだかちょっとあたたかかった。
チョコレートを食べたり音楽を聴いたり。
携帯を見たり。
すれ違う新幹線の顔がかものはしみたいでびっくりしたり。
早く走るためにそう作ったというよりは早く走りすぎてあんな風に顔が削れてしまったみたい。
空いている電車で光に包まれてうとうとするのが好きだ。
その間に遠くにとおくに連れてゆかれる。
ゆらゆら、夢と平行して。
★ ★ ★
熱海駅前の足湯につかった。
みんなブーツや靴下を脱ぎ捨ててぬくぬくしていた。
私はタオルを持っていないことに気づいて、しばらく靴を履けなかった。
