永遠の落下 | アマヤドリ

永遠の落下

昨日ふらりと秩父へ行ってきた。「ふらり」といける距離だったことに驚き。
突然行ったからか、自分の体と景色がなかなか馴染まなかった。夢の中にいるような周りとの距離。ぽっかりと自分だけ色が違うみたい。不思議な温度差があった。

日記に書いているせいか、どこにいっても金木犀が気にかかる。意識しなくても向こうから匂いが飛び込んでくるのだけれど。
ごく弱い霧雨の中ふと香りがして探すといつのまにか隣にいる。つい「また会ったね」という気持ちになる。

知らないところに一人で行った緊張感からか帰りはぐったりと疲れていた。座席に沈み込むように眠り、たまに目を覚ますたびに行きとは逆に山が消えて霧が晴れてゆく。車内も賑わってくる。
それとともに私にも色が戻る。体温も馴染んでくる。
目を閉じて、騒めきを肌で感じた。

いつのまにかすっかり体が冷えていた。
熱いお風呂に入って旅のことを思い出す。ひとり旅のわくわくも山や川をみた感動も、水の音も雨の冷たさもとても遠い感覚に思えた。
それはまるで澄んだ湖に大事に沈められゆく小さな骨のようだった。洗われた骨はゆらゆらと揺れ時折光を受け白い光を目の奥に残す。
とても澄んでいるから、私はいつでもそれを覗き込むことができる。大事な宝物がまだあるか確認するみたいに。

それは今もゆっくりと深い底を目指している。
でももう決してそれをこの手にとることはできない。