『DUST ダスト』
老婆の家に強盗に入ったが、逆に鉄砲を突きつけられ老婆の長い話を聞かされることになる主人公。それはある賞金稼ぎの兄弟の長い話だった。
老婆の持つ金貨に惹かれ話を聞いていた主人公だが、次第にその話自体に興味を持ち始める…
『ビフォア・ザ・レイン』を観て不思議な魅力のある監督だと思ったが、今回も時間を旅し最終的にリンクする作り方は健在。加えてなかなか遊び心もある作品になっている。
NYでの暴力とマケドニアでの異民族間の殺し合いが対照的に描かれていたり、最後の方の飛行機も過去と未来を渡るように描かれている。
主役(昔話の方)のキャラクターがとても魅力的だった。「理由なく殺さない」という彼は、はじめはもっと危険で滅茶苦茶な人間に見えた(俳優の顔立ちのせい?)。が、激情に乗って行動するように見える彼の奥底にはいつも苦悩や自身を燃え立たせる焦燥がある。
荒れた土地(この景色がまた素晴らしい。ブリューゲルの絵を思い出した)の中で繰り広げられる兄と弟の戦いはおそらく「カインとアベル」を強く意識しているものだと思う。リリスだし。弟を演じるジョセフ・ファインズの、純粋を通り越した暗く透き通ったまなざしも印象的だった。
しかし、戦闘シーンはちょっと新鮮だ。
足を撃ち抜かれたり首を切られたり、ものすごく痛そう。でも、撃たれたり切られたりする人たちがなぜか時折滑稽な様子を見せる。びっくりした様子で死んでいったり。リアルに感じる。
「死」は何も特別な事じゃない。赤ちゃんが生まれてきたり、そのすぐ近くて殺しあったり、水をくんだり、それが生活の中に混在している、そんな人々がいるのだ。
作者は、それをたくさん描写する事で、ひとつひとつの死に対する私達の感覚を麻痺させようとしているのだろうか。強烈に印象付けられた反面、どこか鈍くなる、不思議な感覚があった。
過去を守る老婆に青年は心動かされ、物語は息を吹き返し生き続ける。
この監督にはもっと作品を作ってほしい。
- 松竹
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