なないろ、以上
地下鉄の階段を上がるときに見えてくる風景がだんだん色づいてきた。
風が吹くと葉どおしがこすれてちりちり音を立てる。
歩くときいつも自分の耳の中の血液の音か、心臓のリズムか、自分の息遣いに気を取られているので今日は景色のほうに聴力の照準を合わせてみた。
乾いた音。
ポプラの木の、ちょうどてっぺんあたりを吹く風の音。
におい。
枯れた土のにおい。
世界は虹色だな、と思う。
赤は赤でないし、黄色は黄色でないし、肌色は肌色でない。
ただべったりのその一色から成り立ってるわけじゃない。
全部の色が重なり合ってる。
白がいちばんそう。
ごくごく細かい、虹色のつぶつぶでできてる。
シャガールみたいに。
世界は虹色だ。
輪郭と、その表面の色だけを受け取って満足しちゃう事がなんて多いんだろう。