在りかたのこと | アマヤドリ

在りかたのこと

友達の舞台を見に行ってお世話になった先生に会った。
私のバレエの舞台を観にきてくれたのが1月だから、ずいぶん久しぶり。
バレエ団のOGのひとに混ざってご飯を食べた。

先生はずいぶん酔っ払って色んなことを話してくれた。
300ドルだけ持ってNYからフランスに行き、お家も職も持たず色んな人にお世話になりながら6ヵ月そこで暮らしたこと。
ベルギーのカンパニーから誘いがあってオーディションを受けにいったんだけどお金がないから夜行で行って夜中に着いたこと。野宿するのに寒くてさむくてお酒を飲んだらオーディションの時まで酔っ払っていて、それでもその投げ遣りさがよかったのか受かったこと。
大きな舞台の時主役のアンダースタディに入ったんだけどまさか自分にまわってくるとは思っていなくてぼんやりしていたら主役が怪我をし、まったく覚えていなかった振付を何分かで覚え、舞台がおわった時に燃え尽きちゃって何ヵ月も失踪したこと。


先生は携帯電話をもっていない。
移動は自転車。
ずっと東京にいるのに電車のことも全然わかってない。
私も終電ぎりぎりなのに、降りなくてもいい駅で降りてあっちが丸ノ内線ですからね、切符はまた買わないとダメですよ!と送っていかないと迷子になっちゃう。


ぼくは化石だって笑われるんですよ、と言う。
でもね、こんなこというと年寄りの説教みたいだけれど、何もかも便利になりすぎた気がするな。何もかも清潔で平らで、匂いがない。
舞台も同じ。
性のにおいがない。
温度がない。
きれいで技術があって冷たいだけ。
うまく言えないけど、そういう野性みたいなものがなくなっちゃった気がします。


私はもう便利になった時代に生きているから、先生の感じていることを同じに感じることはできないだろうけど、言わんとするところはわかる気がする。
男の子も女の子も、美しくそつなく踊る。
ラインや、さらさらな感触。
野性の感じとか、汗とか、人間くさい歪みとか…
よく言えば洗練されたんだろうな。それも素敵なんだけど。
何が必要なんだろう。
これから、またそこに還ることもあるんだろうか。


好みも考え方も私はまた先生とは違うけれど、何だか分かる部分もあったから考えさせられた。