カノン
夜中、部屋の中に真直ぐ差してくる光が明るかったから、
今日は満月なんだろうとベランダに出た。
やっぱり、まんまる。
薄く雲がかかっていて、一回り大きなぼんやりとした光に包まれている。
霞んでいるのにちゃんと暗いところと明るいところが見えて、じっと見つめるとそれがますます際立つようだった。
胸のそこのほうまでちゃんと、深呼吸をする。
月にかかっているもやもやを吸い取ろうとするように。
そのクリーム色の冷たさで肺を満たして、体のすみずみまでゆきわたるように。
ずっと月と正面から向かい合って、
どうしてだろう、
素直になれるのは、
と思った。
私が月を、特別好きだからなのかな。
それとも、
だれもがこの月の光の音楽に触れると、ひたと心を澄ませることができるのだろうか。
見つめていたら月は、
満月じゃないことがわかった。
左のおでこのほんの端の部分がちょっと欠けている。
だから、満月は今日だ。
見つめられるくらいのひかりだから月は、
やさしい。