雪のなかの暖炉の前で
なんだかとにかくいっぱいの予定をこなした(こなしたという言い方はたぶん相応しくない。楽しいできごとだらけだったのだから)2日間だった。
順を追って書ききれるだろうか。寝てしまわずに。
7日。
初めての友達に会う。
少し待ち合わせに遅れてしまったにもかかわらず切りたての髪を子ゴリラみたいだと思われないだろうかと掌で撫で付けながら新宿駅西口の改札を通り抜ける。やはりこの中で彼女を見分けるのは至難の業だと思われたので携帯に指を掛けたとたん、まさしく彼女でしかありえないという人物が目に飛び込んでくる。同時に自分の顔がほころぶのを感じながら彼女に駆け寄り待たせたことのお詫びを言う。
目を真ん丸くして私の名前を読んだそのひとを、なんてきゅっと小さいんだろうと思う。
問い掛けたいことはたくさんあるのだけれど前もってそういう準備をしたりできない私は、ひとつ質問をしては矢継ぎ早に次の質問を考えてしまったりしている。ちゃんとその答えを聞くことのほうが先なのに…焦っているのだな、私。知りたいしりたい、がつんのめるみたいに先を走っていってしまっている。
お茶をしつつ軽食も摂れたらいいな、ということだったのであらかじめ行きたいと考えていた東口のカフェ、ユイットへ行く。ユイットは私が大好きで昔からややリッチな気持ちを味わいに行くTOPS CAFEの8Fにある。もう長いことTOPS CAFEには通っているのにその上の階のことなど考えたこともなかった。なぜこんなに私の視界は狭いのだろう。人間の目は横に並んでついているから、左右方向のものを見ることよりも上下方向をみることのほうがより不得手だというがまさにそれ。
思わぬことにユイットの開店時間は午後の1時半だったのでお話を聞きながらふらふらと歩く。どこに歩いちゃってるんだろう、と可笑しく思いながらも色々聞き出すのに忙しい。
なんて綺麗なおでこのラインを持っているんだろう、とその横顔を見つめる。さっきから私が少し緊張しているのはもしかしたらこのきゅっという空気のせいだ。私は彼女をマロンみたいなあたたかい色、と感じていたのだけれどパウダースノーみたいでもあるな、と今なら思う。感じていたツヤやマロンのような部分は語る時の眼差しにあったのだな、ということに思い当たりそれが文字に滲み出ていたことに感動を覚える。
全体的にレトロな感じのお姉さん(私の大好きな美容院の、中でも今まで一番髪を洗うのが上手な人にどこか似ていた)に案内され店内へ。考えていたよりずっと素敵。牛やちょっとエウ゛ァンゲリオンみたいな木彫りのあるアートな空間(のちにこのエウ゛ァンゲリオンのブリッヂみたいな彫刻は牛のブリッヂだということが分かり、つまりその小ギャラリーは牛だらけなのであった)を通り抜け雑然と積まれた本や雑誌にわくわくの満ちた視線を投げつつ一番奥の、窓際の席へ。
あたたかなブランケットにも嬉しくなる。なにしろ、ブランケッツだから。
笑っちゃうくらいに大きな、もう顔が隠れちゃう程の大きなボウルに入ったカフェ・オレとココア。パンとシチューのセット。を、長いながい話をしながらゆっくりゆっくり頂く。
ああでも、今思えば私が店内を見渡せる位置に座ってしまったな。彼女は何を瞳に入れながらお話してくれていたのだろう。
彼女の話にはよどみがなくて何だかこの女の子といることはある懐かしい感覚をくすぐる。芝生や橋の裏での秘密のお話みたいな。うん、でも私は今朝鏡の中にいたあの存在で、どきまぎしちゃう少年ではない。
お店にはミヒャエル・ゾーウ゛ァの絵が4枚飾ってあった。展覧会に行かなければわからなかったこんなことがふいに嬉しくなる。
ずっとそんな風に話しているのもよかったのだけれど彼女の提案でカラオケへ行くことにする。どうしても歌には苦手意識があるのだけれどもそれよりもなによりも彼女の歌を聴いてみたかった。
彼女はaikoの難しい歌を、やっぱり雪解けの小川みたいに綺麗な繊細な声で歌った。aikoいいよね、と二人でしみじみ。もしかしてこのひとといることのこの感覚と、似ているのかもしれないなぁと考えたのはこれを書いているたった今の話。
それからとってもおもしろい歌も歌ってくれた。
苦手なはずの歌なのにどうしてか楽しくて時間はあっという間だった。実はこれから5時間後と25時間後にもカラオケへ行くことになるのだけれどいずれもいつもみたいに気が重いと思わずにいられたのは彼女とのカラオケのおかげだと思う。
そう、彼女からはドイツへの想いや景色の匂いのようなものももらった。それからいくつかの言い回しも。ごめんなさいはsorryで大丈夫なこと。いくつかの自己紹介の仕方。
別れ際そのひとはその、ずっと楽器を触ってきた華奢な綺麗な手をすっと、いっぱいに伸ばしてきた。ハグする前のその仕草があまりにも可愛くて今でも目蓋の裏で再現することができる。なんだか懐かしいような気さえして。
また会おうね。
すべてをちゃんと大切にすることができるか、いつもそれを一番に恐れてきた私なのだけれど。
大丈夫。
これからも色んな話をしていきたいと思ったから。その気持ちだけ、きちんと信じていればいいとしたら、ただただこの幸せな気持ちは膨らんで行くばかりなのだなと青空みたいな気持ちになった。
そんな、出会い。
順を追って書ききれるだろうか。寝てしまわずに。
7日。
初めての友達に会う。
少し待ち合わせに遅れてしまったにもかかわらず切りたての髪を子ゴリラみたいだと思われないだろうかと掌で撫で付けながら新宿駅西口の改札を通り抜ける。やはりこの中で彼女を見分けるのは至難の業だと思われたので携帯に指を掛けたとたん、まさしく彼女でしかありえないという人物が目に飛び込んでくる。同時に自分の顔がほころぶのを感じながら彼女に駆け寄り待たせたことのお詫びを言う。
目を真ん丸くして私の名前を読んだそのひとを、なんてきゅっと小さいんだろうと思う。
問い掛けたいことはたくさんあるのだけれど前もってそういう準備をしたりできない私は、ひとつ質問をしては矢継ぎ早に次の質問を考えてしまったりしている。ちゃんとその答えを聞くことのほうが先なのに…焦っているのだな、私。知りたいしりたい、がつんのめるみたいに先を走っていってしまっている。
お茶をしつつ軽食も摂れたらいいな、ということだったのであらかじめ行きたいと考えていた東口のカフェ、ユイットへ行く。ユイットは私が大好きで昔からややリッチな気持ちを味わいに行くTOPS CAFEの8Fにある。もう長いことTOPS CAFEには通っているのにその上の階のことなど考えたこともなかった。なぜこんなに私の視界は狭いのだろう。人間の目は横に並んでついているから、左右方向のものを見ることよりも上下方向をみることのほうがより不得手だというがまさにそれ。
思わぬことにユイットの開店時間は午後の1時半だったのでお話を聞きながらふらふらと歩く。どこに歩いちゃってるんだろう、と可笑しく思いながらも色々聞き出すのに忙しい。
なんて綺麗なおでこのラインを持っているんだろう、とその横顔を見つめる。さっきから私が少し緊張しているのはもしかしたらこのきゅっという空気のせいだ。私は彼女をマロンみたいなあたたかい色、と感じていたのだけれどパウダースノーみたいでもあるな、と今なら思う。感じていたツヤやマロンのような部分は語る時の眼差しにあったのだな、ということに思い当たりそれが文字に滲み出ていたことに感動を覚える。
全体的にレトロな感じのお姉さん(私の大好きな美容院の、中でも今まで一番髪を洗うのが上手な人にどこか似ていた)に案内され店内へ。考えていたよりずっと素敵。牛やちょっとエウ゛ァンゲリオンみたいな木彫りのあるアートな空間(のちにこのエウ゛ァンゲリオンのブリッヂみたいな彫刻は牛のブリッヂだということが分かり、つまりその小ギャラリーは牛だらけなのであった)を通り抜け雑然と積まれた本や雑誌にわくわくの満ちた視線を投げつつ一番奥の、窓際の席へ。
あたたかなブランケットにも嬉しくなる。なにしろ、ブランケッツだから。
笑っちゃうくらいに大きな、もう顔が隠れちゃう程の大きなボウルに入ったカフェ・オレとココア。パンとシチューのセット。を、長いながい話をしながらゆっくりゆっくり頂く。
ああでも、今思えば私が店内を見渡せる位置に座ってしまったな。彼女は何を瞳に入れながらお話してくれていたのだろう。
彼女の話にはよどみがなくて何だかこの女の子といることはある懐かしい感覚をくすぐる。芝生や橋の裏での秘密のお話みたいな。うん、でも私は今朝鏡の中にいたあの存在で、どきまぎしちゃう少年ではない。
お店にはミヒャエル・ゾーウ゛ァの絵が4枚飾ってあった。展覧会に行かなければわからなかったこんなことがふいに嬉しくなる。
ずっとそんな風に話しているのもよかったのだけれど彼女の提案でカラオケへ行くことにする。どうしても歌には苦手意識があるのだけれどもそれよりもなによりも彼女の歌を聴いてみたかった。
彼女はaikoの難しい歌を、やっぱり雪解けの小川みたいに綺麗な繊細な声で歌った。aikoいいよね、と二人でしみじみ。もしかしてこのひとといることのこの感覚と、似ているのかもしれないなぁと考えたのはこれを書いているたった今の話。
それからとってもおもしろい歌も歌ってくれた。
苦手なはずの歌なのにどうしてか楽しくて時間はあっという間だった。実はこれから5時間後と25時間後にもカラオケへ行くことになるのだけれどいずれもいつもみたいに気が重いと思わずにいられたのは彼女とのカラオケのおかげだと思う。
そう、彼女からはドイツへの想いや景色の匂いのようなものももらった。それからいくつかの言い回しも。ごめんなさいはsorryで大丈夫なこと。いくつかの自己紹介の仕方。
別れ際そのひとはその、ずっと楽器を触ってきた華奢な綺麗な手をすっと、いっぱいに伸ばしてきた。ハグする前のその仕草があまりにも可愛くて今でも目蓋の裏で再現することができる。なんだか懐かしいような気さえして。
また会おうね。
すべてをちゃんと大切にすることができるか、いつもそれを一番に恐れてきた私なのだけれど。
大丈夫。
これからも色んな話をしていきたいと思ったから。その気持ちだけ、きちんと信じていればいいとしたら、ただただこの幸せな気持ちは膨らんで行くばかりなのだなと青空みたいな気持ちになった。
そんな、出会い。