ふちどり
帰りが遅くなってとても寒かったからお風呂にじっくり。
沸かし直して、その間にたくさんものを用意する。
本と、歯ブラシと、化粧水とクリーム、ペットボトルにお水、それからろうそく。
電気はつけない。
ろうそくだけ。
ペットボトルの影が壁に大きく映し出される。息をするたびに光と影が揺れるから、お風呂全体が一緒に呼吸をしているよう。
火をみつめると不思議と穏やかな気持ちになる。
なぜかな。
昔むかし、夜は真っ暗闇だったのに、火を見つけてからひとはその闇の恐怖から解き放たれた。その、安心の記憶だろうか。
その火の手前で水をかき回す。い つもより水は粘度があるように見える。
オレンジに光りながら指にまとわりつき手首を伝い、肘から落ちる。
立ちのぼる湯気はやはり私の呼吸に乱されて渦を巻く。そうして次から次へと私を包んでは去り、天井の暗がりへ消えてゆく。
大きなため息は厳禁。
火が消えてしまうから。
ゆるゆるとお湯に身を沈める。
なんて美しくて、二度とない一瞬だけのかたちなんだろう。
火は。
すべては。
そうして、まだ私がちゃんとその美しさに気付けることを再確認する。
このあらゆるものの一連の流れのなかに私もいるんだなあって。
でもその中でいろんな欲を持っていて、ただそこにいる、存在して消えて…の流れの中からぴょこんと。
私は目覚めてしまった。
沸かし直して、その間にたくさんものを用意する。
本と、歯ブラシと、化粧水とクリーム、ペットボトルにお水、それからろうそく。
電気はつけない。
ろうそくだけ。
ペットボトルの影が壁に大きく映し出される。息をするたびに光と影が揺れるから、お風呂全体が一緒に呼吸をしているよう。
火をみつめると不思議と穏やかな気持ちになる。
なぜかな。
昔むかし、夜は真っ暗闇だったのに、火を見つけてからひとはその闇の恐怖から解き放たれた。その、安心の記憶だろうか。
その火の手前で水をかき回す。い つもより水は粘度があるように見える。
オレンジに光りながら指にまとわりつき手首を伝い、肘から落ちる。
立ちのぼる湯気はやはり私の呼吸に乱されて渦を巻く。そうして次から次へと私を包んでは去り、天井の暗がりへ消えてゆく。
大きなため息は厳禁。
火が消えてしまうから。
ゆるゆるとお湯に身を沈める。
なんて美しくて、二度とない一瞬だけのかたちなんだろう。
火は。
すべては。
そうして、まだ私がちゃんとその美しさに気付けることを再確認する。
このあらゆるものの一連の流れのなかに私もいるんだなあって。
でもその中でいろんな欲を持っていて、ただそこにいる、存在して消えて…の流れの中からぴょこんと。
私は目覚めてしまった。