すいかパジャマ | アマヤドリ

すいかパジャマ

もったりと厚くて、なんの飾りもない丸首のパジャマだった。
何度も洗濯して色落ちしたような赤の、肌触りもそんなに心地よいとは言えない、ごわごわした。

だけど私は小さい頃そのパジャマが好きだった。
なぜならスイカの匂いがしたからだ。

お風呂上りのすべすべの体をそのごわごわとした綿の厚みにもぐりこませて、くるぶしのところの太いゴムをひっぱる。そしてうつむき、胸のところを両手でちょっとつまんで持ち上げ、顔をうずめる。
そして深呼吸。

確かにスイカのにおい。


ほら、ってお母さんに嗅がせてみたけれど「スイカの匂いなんかしないわよ」って笑っているだけ。「赤いからそんな風に思うんでしょう。スイカの色に似ているから」

ううん、違う。絶対スイカのにおいがするもの。

私、もしかしてこのパジャマに昔スイカの汁を零したのかもしれないよ。
でもそれなら洗ったらスイカの匂いは消えてしまうよね?

何度も何度も洗濯に出しても、胸のところをつまんで嗅ぐと、必ずスイカの匂いがした。
夏も、冬も。

赤いからってスイカの匂いがするっていうんなら、緑のパジャマはきゅうりの匂いがするの?そんなことない。
このパジャマだけが特別なんだ。

ちっとも優しい肌触りじゃないしけた赤のパジャマ。


あのパジャマが大好きだった。