グアム4日目(最終日)②
私がパイロットの隣、友達が端になる。騒音がすごいからお互い話をするためのヘッドセットをつけ、鞄を足元にしまい、カメラはストラップを厳重に手首に巻きつけるよう言われる。
怖くて緊張がたかまるが、昨日の船の事を思い出してほんの10分くらいなら我慢できる、と思う。強くなった。
ふっと飛び立つ。
意外と揺れない。ロープウェイのように斜めに上昇する。
なんだ!!
全然怖くない。だって急降下しないし…揺れないから。
パイロットが「君達のホテルはどこだ」というから「ガーデンビラだ」とヘッドセットに叫ぶ。するとパイロットが「じゃああそこが君達のホテルだ」と指を指す。
全然違う。ガーデンビラ、が全然伝わってないみたいだった。何度も発音したのだけれど。私は自分でガーデンビラを見つけ、「あれだよ」と主張したけれどそれすら通じず。
行きの飛行機で友人が「ミルク」と言ったのに「ビール」を出された事を思い出した。
恋人岬が近づいてくる。なんて綺麗なんだろう。
グアムを飛行機の上空から見たときにこの断崖絶壁をみて、絶対この場所に来たい、と思った恋人岬。
許されぬ恋をした恋人同士がこの岬から身を投じたという伝説のあるこの岬のことを私はグアムに来るまで知らなかった。
するとヘッドセットには突然『タイタニック』が流れる。「かわいそうなふたり」と言うパイロット。
私たちは笑って、タイタニックのあの船首でのポーズをしたりしてふざける。
手を広げると手首から先がヘリの外に出る形に。そこに感じる風の強さに驚いた。カメラを持っていたのだが、思わず離してしまいそうだったもの。よかった、ちゃんと手首にストラップを強く巻いていて。
ヘリは恋人岬の真上を飛び、海岸線を舐めるようにしてヘリポートへ。
なんだかすごく放心してしまった。
空を飛べたことに。
帰ってきてもくもくと支度をする。二人ともへとへとだ。でも満足。
「この旅行、楽しく一緒にいてくれてありがとう」と友達が突然言う。
驚いて、私も言う。「こちらこそ。ご飯を作ってくれてありがとうね。」そして笑う。なんなの、改めてやめてよお、って。
ごめんね。ずっとあのひとのことを考えていたのに。
でも、ちゃんと楽しんだよ。あなたとの思い出に。知り合ってもう18年かな?その年月を不思議に思った。
帰りはバスを待ったり電車を待ったり。
その間ずっとぐったりしていた。
終わっちゃうんだ、この旅が、と思うと寂しかったし、でも日本に帰れることが少し安心なようでもあった。
もうあのひととは連絡はとらない。そう思って日本を発ったのだが、やはり連絡してしまうだろうと思った。この気持ちを、ずっとこの旅で考えていた事を伝えたかった。
たとえそれが何にもならなくても。
夕日は眩しすぎて直接見ることが出来なかった。雲が紅色なのをずっと見ていた。
随分暗くなってから日本の明かりが見えてきた。高度を落としてきたのでもう着陸か、と思ってから大分経ってもまだまだ飛んでいた。
成田上空。
このまま、あのひとの実家へ遊びにいけたらどんなにいいだろう。
この町に遊びにくることはもうないんだろうか。この灯りのどれかは、あの楽しかったおうちなのかな。
すごく辛くなる。
すごく。
日本に着いて、あのひとに帰ったよ、とひとことメールを打つ。もう本当にぐったりしながらまた京成線に乗る。
思い出とかを語る元気もなく、でもお互い優しい気持ちで電車に乗っていた。
池袋で友達と別れる時、寂しかった。
すごく。

