秋も深まり、萩の花が咲く国立劇場、今日はBプロ、Cプロを続けて見る、12時開演、終りは7時40分の長丁場だ。途中幕間に昼食と夕食を食べる。 客の入りも上々でほぼ満員だ。
通し狂言義経千本桜(Bプロ)
三段目
下市村椎の木の場
しもいちむらしいのき
下市村竹藪小金吾討死の場
しもいちむらたけやぶこきんごうちじに
下市村釣瓶鮓屋の場
しもいちむらつるべすしや
椎の木の場、いがみの権太(菊之助)が小金吾(萬太郎)を強請って20両を騙しとった後、息子をおんぶして女房小せん(吉弥)と三人で花道を引っ込む、このラストで見せる子煩悩で優しい父親と夫の姿が印象的だ。菊之助がいい。 小金吾討死の場は萬太郎がとても良かった。追手に縄を何重にも掛けられる殺陣の場面は迫力があり歌舞伎らしい様式美にあふれ面白かった。
鮓屋の場は、梅枝が奉公人の弥助実はかくまわれている維盛を好演。娘お里(米吉)とのじゃらじゃら感とシャキッとした維盛を非常にうまく演じ分けていた。 その後、ぐれてどうしようも無く勘当された権太(菊之助)が親の弥左衛門(権十郎)の維盛一家を逃す計画を女房と子供を身替わりに差し出してまで助けようとする。親父はその真意を理解できず、怒って権太を刺してしまう。親子の深い断絶、どんなことをしてでも父親に認めてもらいたかった権太。けっこう現代的かも。泣かせました。
通し狂言義経千本桜(Cプロ)
四段目
道行初音旅
みちゆきはつねのたび
河連法眼館の場
かわつらほうげんやかた
舞台は、満開の吉野の桜が背景、道行初音旅だ。時蔵の静と菊之助の忠信の道行、同じ忠信でも伏見稲荷鳥居前の荒事の赤い隈取り、仁王襷の忠信とは全く違うイメージの白塗りの忠信が出てくる。静と忠信の舞踊の幻想的な舞台が一転して、逸見藤太(彦三郎)の登場。少し滑稽味が足りなかったかな。そして菊之助が花道をキツネ六方で引っこむ。舞台上の逸見藤太の彦三郎は幕が閉じるまで片足立ち微動だにしないこれはすごい。
河連法眼館の場、法眼の楽善、介添が後ろについての出演、立つ座るの動作も大変そうだった。菊五郎が初役で義経とのこと。 主役の菊之助は、時代物の本物の忠信とキツネの忠信を巧みに演じ分ける。正体を表しキツネになってからの手すりの上を跳ねるように渡るなど運動能力の凄さを見せる。 ここでも鼓の皮にされた両親を慕う子狐の切ない思いが主題となる。最後は、舞台上手の桜の木を源九郎狐が昇って行く、見送る義経と静。 音羽屋!
さすが疲れました。