ダビデの波瀾万丈な人生も、終焉に近づいてきます。

ふと、彼は思います。
自分はこんな豪華な邸宅に住んでいるのに、
「なぜ神は粗末な幕屋に祀られているのだろう、神のために壮麗な神殿を建てようではないか」
と思い立ちます。

しかしその夜、神様は夢に出てきてこう言います。
「あなたは多くの殺人を犯した。聖なる神殿を建てるのはあなたではない。息子ソロモン

がそれを行う」と告げられます。

つまり、神様からダビデはお断りだよ、ということです。

しかし、彼は気を取り直して、息子ソロモンにその仕事を託し、自分の私財を提供します。

このソロモン。
ソロモン、といえばソロモン諸島、とか、「キング・ソロモンの秘宝」や「ソロモンの偽証」
等のエンターテインメントでも有名です。自分は観たことないけど。

それだけネームバリューがあるソロモン。
彼の特色は、その頭脳でした。

一例として、こんな有名な大岡裁きがあります。

二人の娼婦が赤ちゃんを産みました。
しかし片方の赤ちゃんが二日後に死んでしまいます。
死んでしまったほうの母親は、こっそり生きている赤ちゃんと交換してしまいます。
朝目覚めると、自分の赤ちゃんはおらず、死んだ赤ちゃんが置かれていました。

ソロモンの前に訴えがなされます。
両方の母親は自分が産んだと主張します。
ソロモン王は、、
「では、それぞれの訴えが正しいと思うので、
その赤ちゃんを半分に切ってそれぞれに分け与えるように」
と言って家来に赤ちゃんを逆さづりにして家来に剣を持たせます。

前者の赤ちゃんが死んでしまったほうの母親はそれでいい、と言い
後者の本当の母親は、死なせてしまうのは不憫なので、赤ちゃんは相手に差し出します、

と言います。

ソロモンは「後者の母親が本当の母親である。本当の母親に赤ちゃんを返しなさい」

と裁定しました。まぁそれがすごい知恵なのかはさておき。

神様が卓抜した知恵を与えたので、イスラエルは栄えます。
エジプトのシェバの女王もその知恵と財宝を見に謁見に来た、という記述があります。

王国は栄え、民の寄進もあって遂にエルサレムの丘に壮麗な神殿が建立されます。

しかし、権力の絶頂期を迎えると、人間の秩序は衰退するのが世の常。
高齢になったソロモンは次々と側室を迎え、その数1000人近くと伝えられます。

その中には異教徒も含まれ、老いぼれていくソロモンは

異教の神に身を屈めるようになります。

日本の歴史を見ても、権力の衰退は大体三代目から始まりますよね。

鎌倉幕府も三代目源実朝まで、室町幕府も足利義満まで、と。
創業者の苦労を知る二代目までは理想に邁進しますが、三代目以降、グダグダになる。

江戸時代の川柳で
「売り家と 唐文字で書く 三代目」というのがあります。

三代目は事業そっちのけで遊興して、財産を食いつぶし、
「売り家」の文字も、風流な洒落た唐文字、という意味です。

そんな感じで、ソロモンの死後、家来の多くが離反し始め、

イスラエルはまた不安定になっていきます。

なお、ソロモンの建てた神殿には巨額の費用がかかりました。
学者の中には、神殿建立のためにソロモンが重税を課したゆえ、国民が不満を募らせ、
イスラエルが不安定になった、と見る向きもあります。

聖書には「民が自ら多くの富を寄進した」とあります。

どうとらえるかは、読んでくださった方々にお任せしますね。

お読みいただきありがとうございました。

 

現在のエルサレムの神殿はオスマン・トルコの征服などで破壊され、

地下に埋もれています。今も発掘調査が行われています。