フランス、イングランドに勝ってベスト・フォーに進出しました。
サッカー界においてフランスこそ最大の多民族構成のナショナルチームでしょう。
今はやりのダイバーシティを具現したチームと言えそうです。
ヨーロッパの代表チームでは一番黒人選手の多いことは見てとおりです。しかし非可視の選手もそのルーツは多様です。
まずは、監督のディディエ・デシャンからしてフランスバスク・バイヨンヌ出身のバスク人です。
GKのユーゴ・ロリスは姓の"Lloris"の綴りからしてカタルーニャ系です。カタルーニャ語では”リョリス”という発音になるでしょうか?元代表監督のレイモン・ドメネクもカタルーニャ系です。唯我独尊エリック・カントナもマルセイユ出身のカタルーニャ人説があります。
その姓のとおりリュカ、テオのエルナンデス兄弟はスペイン系。
トップ下のアントワン・グリーズマンはドイツ系およびポルトガル系です。
ダヨ・ウパメカノなどの黒人選手は旧フランス領のアフリカ諸国からの移民の子孫です。また控えのマルキュス・チュラムのように父リリアンがグアドループなどのフランス海外県のカリブ系の黒人選手もいます。
エースのキリアン・エムバペの父はカメルーン人、母はアルジェリア系でパリ近郊の生まれだそうです。
キリアン・エムバペ(左)とオリヴィエ・ジルー
主力選手で、一応いわゆるフランス人と思われるのは、オリヴィエ・ジルー、アドリアン・ラビオ、バンジャマン・パバールくらいなもんでしょう。
よくもまあ、これだけ多彩なルーツの人材を集めたものだという気がします。
多様性だけでなく、選手層が厚いのも今回のフランスの特徴でしょう。
本来レギュラーのはずの、アルジェリア系のカリーム・ベンゼマ、マリ系のエンゴロ・カンテ、ギニア系のポール・ポグバを怪我で欠いてもこのパフォーマンスには呆れてしまいます。
前回無得点だった36歳のジルーが今回はベンゼマの代わりとして4得点と絶好調。
ジルー(36)、ペペ(39、ポルトガル)、モドリッチ(37、クロアチア)それとメッシ(35、アルゼンチン)と今回が最後とみられる高齢選手が活躍しているのも、今回の特徴でしょうか?残念なのはクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)とギャレス・ベイル(ウェールズ)の不振。
過去の外国系選手としては、レジェンドのミッシェル・プラティニは祖父が北部ベネト州出身のイタリア系、同じくレジェンドのジネディーヌ・ジダンはアルジェリアのベルベル系、ローラン・コシェルニーはポーランド系、ロベール・ピレスがポルトガル系、アラン・ボゴシアンはアルメニア系、ユーリ・ジョルカエフの父ジャンはロシア・カスピ海北岸のモンゴル人の一支族のカルムイク人。
ユーリ・ジョルカエフの父、元フランス代表DFのジャン・ジョルカエフはモンゴル系
マリウス・トレゾール、フローラン・マルダ、クリスチャン・カランブーはそれぞれかフランス海外県のマルティニーク、ギアーヌ(フランス領ギアナ)、ニューカレドニア出身などなど。
過去には、国内少数民族系選手も数多く在籍していました。ノルマン人(ノルマンディ)のエマニュエル・プティ、ブルトン人(ブルターニュ)のステファン・ギバルシュ、バスク人(フランスバスクのサン・ジャン・ド・リュズ生まれ)のビシェンテ・リザラズ、コルシカ人(コルス)のルドヴィク・ジュリとセバスティアン・スキラーシ、南仏出身のジプシー(ロマ/ジタン)のアンドレ=ピエール・ジニャックなど。あと、忘れてならないのがアルザス人のアーセン・ヴェンゲル(Arsène Wenger)。
バイキングの血を引くノルマン人のエマニュエル・プティ
アルザス人のアーセン・ヴェンゲル