根室本線・厚床駅のロケーションは微妙だ。駅自体は根室市にあるが、南に行くと、すぐに厚岸郡浜中町の町域に入る。そこから先の海岸地帯まではずっと浜中町の領域だ。

 

国土地理院20万分の1地勢図 根室(平成24年)に加筆

 

国土地理院20万分の1地勢図は面白いもので、いまだに旧国界が示されている。

 

関東・北陸以南の国、例えば播磨の国、武蔵の国などのいわゆる律令国は平安中期までには定められたようで1000年以上の歴史がある。東北地方は大まかで日本海側の出羽の国と太平洋側の陸奥の国の二つであったが、明治になってから出羽が二つ、陸奥が五つに分けられた。羽後の国や陸前の国などがそれにあたる。律令制の及ばなかった北海道にいたっては、明治時代に松浦武四郎を中心に千島国を含む石狩国など11カ国が制定された。それらの(旧)国界が20万分の1図に記されているわけである。

 

旧国(名)は今の生活には全く実用性はなく、播但線などの鉄道路線名や常陸多賀のような駅名、豊後高田市などの自治体名に使われている程度である。しかし明治・大正期までは手紙で住所を書く場合「武蔵国北足立郡浦和町・・・・・・・・」などと地理的区分を現すのに用いられていた。

 

その国界は現在の都府県界(北海道においては支庁(現:振興局)界)に一致している場合もあれば、不一致な場合もある。もちろん今の2.5/5万分の1地形図には国界は記されていないが以前には記されていた。

 

厚床駅周辺はまさにその一例で、根室国釧路国の旧国界と現在の根室市(旧根室支庁)と厚岸郡浜中町の境界とが一致していない。旧国界は厚床駅構内のすぐ南を走っている。これは一つの分水界と一致している。しかし今の境界はそこではなく、別当賀川と根室本線のラインである。ある時に境界の変更が行われたことを示している。上の地図に示した「薄むらさき色部分」が変更部分、根室市に釧路国から編入された部分である。

 

さて、厚床駅で降車し、自転車(マウンテンバイク。スコットユニトラック)を組み立てて国道44号線を東に行き、初田牛方面への道に入南に向かう。とすぐに根室国と釧路国との国界上に至り釧路国に入る。そして、根室本線の踏切を越える。しかしまだ根室市だ。次に別当賀川を渡る。ここが今の根室市と浜中町の境界である。

国道から南に分かれ道道を行く。この辺りが国界だ。

今の境界は別当賀川。

橋を越え、厚岸郡浜中町に入る。浜中町はルパン三世で知られる漫画家・モンキーパンチの出身地だ。

 

途中から道道988号線に移り海岸に向かう。地名は浜中町厚床原野。厚床は根室・浜中にまたがる地名である。

 

しばらくは快適な舗装道路だが、やがて砂利道に変わる。さらに進むと太平洋に出、道道142号線・北太平洋シーサイドラインと合流する。

浜中町の酪農地帯を行く。ほとんど車とすれ違わない。

途中より砂利道となる。一台のトラックが私を追い越した。

 

国土地理院2.5万分の1地形図 厚床(平成15年)より

 

やがて太平洋が見えてくる

原野と馬、淀んだ空、道東らしい景色

侘しい恵茶人海岸に出る。

道道142号線・北太平洋シーサイドラインと合流。

 

この境界変更は昭和38年(1963年)に行われたようだ。それ以前は、旧国界=市町界であったのだ。

(以上の写真は2008年8月のものである。今回で道東シリーズはひとまず終了です)