マックスマップル北海道道路地図(昭文社)より

 

道道32号線(上図)は、今回と通った時には一台の車ともすれ違わなかったように今はほとんど顧みられない廃道に近い状態ですが、太平洋側の噴火湾から日本海方面に抜ける古い道であったようです。

 

下は明治年代に北海道庁が制作した20万分の「道庁切図」ですが、小鉾岸(大岸)川沿いに道があって支流の沢に細かく地名が記されています。

 

 

その沢筋の部分を拡大してみると下のようになります。

 

上図中央右に「ルペシュペ」及び「フシュコルペシュペ」という沢名が記されいます。また、昆布川の上流の沢には「ルチシウルクシュペツ」という沢が記されています。

 

アイヌ語で「ルペシュペ」も「ルクシュ」も峠道を示す地名で、いまの道道32号線のルートが噴火湾沿いの虻田のアイヌたちが後志方面に狩や交易に行きために使われていたことが示されています。 (「フシュコルペシュペ」は古い峠道の意)

 

次に示すのは、大正6年測量、昭和20年参謀本部発行(極秘資料)の5万分の1地形図「豊浦」から抜粋した小鉾岸川沿いの部分です。

 

この図ではこの道は「小鉾岸越」と記されていて、早い時期から利用されていたことがわかります。

 

昆布川最上流の豊浦町新富地区には道標が建っており、また明治から昭和初期にかけての北海道の交通システムにおいて重要な位置を占めていた駅逓「上昆布駅逓」の記念碑が沿道に建てられています。

 

 

豊浦町新富地区(上昆布)の辻にある道標

 

 

その先に建てられた「上昆布駅逓所」の記念碑

 

この道は古い時期には盛んに利用されたルートだったようですが、1955年に道道に指定され、また1994年の道道再編に際しても”32号”という二桁の主要道道」に指定されています。しかしその後改良された形跡はないのが現状です。今後ここにいトンネルをぶち抜く可能性などないように思われます。じつは道央自動車道豊浦インタに直結しているの道なのですがね。

 

ガードレールすらない道道32号線上昆布越えの現状。一車線でところどころに待避所あり。

 

この沢が「ルペシュペ」か?