ウトナイ湖 Ⓒ国土地理院


千歳線の植苗駅からの南側は上下線が左右に分かれ、室蘭本線の複線を両側から挟むように複々線のような形で沼ノ端駅に向かいます。そして、千歳線下り線、同上り線、それと室蘭本線とが三角形(ABC勇払トライアングルとする)を作っています。

勇払トライアングル ウトナイ湖 Ⓒ国土地理院)


この灌木がまばらに生えた湿原と雑木林の台地が織りなす広漠とした景色を4本のレールが絡む姿は壮大で、北海道らしい鉄道風景のひとつです。

 

では植苗駅で下車して、その勇払トライアングル内部に行ってみましょうか。



植苗駅(D)は3月に廃止となった美々駅とほぼ同じデザインだが、美々とは異なり周囲に民家もあって、生生活感のある駅。


植苗駅に降りて南に歩き始めます。幸い下り線に沿って小径が続いている。(FJ

 

ややすると(A地点)、千歳線は上下にわかれる。上り線を走行くのは苫小牧行き普通電車。

 


しばらく下り線に沿ってゆくと、不思議な踏切(J)があり、それを渡って勇払トライアングルの内部に侵入できる。

 



踏切を渡ったところから見た千歳線下り線。台地を離れた後は築堤上を行きやがて室蘭本線と並走する。

 


Jから入った勇払トライアングル内部は、落葉樹と笹の下草が茂った台地。
 

 
勇払トライアングルの西端は千歳線上り線で区切られる。

 

さて、勇払トライアングルのクライマックスは、千歳線上り線と室蘭本線複線との立体交差(C)です。

室蘭本線は遠浅から湿原内の築堤を一直線に、台地の先端部は切通しで破って沼ノ端に向かいます。一方、千歳線上り線はこの先細りの台地をうまく使ってそれと交差しています。この千歳線上り線は前身である私鉄の「北海道鉄道」」(二代目)によって作られた、単線時代からのルートです。

 

なぜそんなルートをとったかと言いますと、「北海道鉄道」は、沼ノ端駅の東側から主に厚真、鵡川方面に行く路線(金山線等)を経営していましたが、札幌方面へ進出するための札幌線(現千歳線)を建設する際にはどこかで室蘭本線と立体交差する必要がありました。そこでこの地形をうまく利用して路線を設けたのです。このルートは正解で、千歳線を複線化された後も上り線として生かされています。

 

下の写真は勇払トライアングルのかなめ立体交差のC地点のものです。上が千歳線上り線、下が室蘭本線の複線です。

 


 

昭和30年台までは下の室蘭本線の方が主役で、気動車トロトロ走るだけの千歳線は脇役でした。その頃はSLの吐き出す煤で千歳線の橋桁は真っ黒だったと思います。今は主客が完全に逆転し、千歳線は北海道有数の幹線、沼ノ端以北の室蘭本線は廃止の危機にあります。


 立体交差(C)を行く千歳線苫小牧行き普通電車。


台地上より室蘭本線沼ノ端側を望む。”この風景を見たかった”


線路脇(C)まで降りて室蘭本線遠浅方面を望む。
 

 
Cより室蘭本線沼ノ端方面を望む。ここを長大な石炭列車が頻繁に交差する1970年以前の姿を見てみたかった。今は列車はめったに通らない広漠たる路線風景。