つぶせ!裁判員制度 (新潮新書)/新潮社

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2008年3月20日発行

今日はこれ。感想を一言でいうと「エッジ効きまくり!」。
東大理学部卒、裁判官を20年経験された著者が裁判員制度のアラを主張する一冊でした。
裁判員制度により、誰もがいつか裁判員を経験する可能性があるので
そういう意味では入り込みやすい。

内容
前半で裁判員制度導入経緯が説明され、
中盤では裁判の実態と難しさ、
後半で裁判員制度の欠陥を指摘している。

本書を読む限り、裁判員制度は導入の正当性が曖昧だという事がわかる。
小渕内閣、日本弁護士連合会、法務省、マスコミ、世論、最高裁など
様々な立場からの主張の妥協点が、この制度だったと書かれている。
言い方を変えると「なぜ、制度が必要か」が導入理由として欠けているのである。

さて、内容の専門的な部分はここでは割愛して、
井上さんはつまり何が言いたいのかを自分なりに理解した。

「裁判員制度を国民の皆さんで廃止しましょう」である。

できるわけがない。。。

いや、主張はよくわかるし、大変勉強になる本だとは思うが、
廃止のための方法論が全くと言っていいほど書かれていないのである。
もしくは書かれていても現実味が薄い。

内容に触れていうなら、
読者が裁判員候補者になった場合、本書を片手に拒絶を訴えることができるとのこと。
いやいや、訴えた後どうなるのかご自身が一番よくお分かりではないのか。
また、訴えても廃止には繋がらない気がするのは私だけか?

「廃止してその次にどこを目指せばいいのか」もわからない。
代案が用意されていない。。。

最終章、廃止のバスに乗り遅れるな!とされているが、
2012年10月、私は乗らなかったことに気付いた。
そして、バスが終点に着かなかったことも気付いた。

というわけで、裁判員制度を力いっぱい否定している良書だと私は理解した。
そして、国民(私含む)が司法にあまり関心を持っていない事を
自覚する必要性を本書から感じた。

ちなみに2010年3月に著者は
「直感」が人を裁く時代 (WAC BUNKO)/ワック

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を出版されている。
ご縁があったら読んでみようと思う。