2021年4月、サイネオスに30名以上の新卒社員が入社しました。
 
その1年半前の 2019年11月、サイネオスは「同業他社の成長率に対抗するため、今後、新卒社員を採用していく」と社内発表をしました。


旧インヴェンティヴのCOS達が退職勧奨により会社を去ってから、約半年後の出来事です。
 
これから入社する新卒社員のために、各ビジネスユニットをまたいでタスクフォースチームが結成され、綿密な教育プログラムが作成されました。
 
新卒社員教育プログラムによると、
 ・ 新卒社員は、数か月に及ぶ研修を受けた後、各ビジネスユニットに配属される。
 
 ・ ビジネスユニット配属後は、経験豊富なCRAClinical Research Associateを新卒社員のメンターにつける。

 
 ・ 経験CRAの細やかな指導・監督のもとで、ようやく1施設のモニタリングを担当。

 ・ 新卒社員を "2施設以上担当できるCRA" に育てることが目標。
 
さらに、新卒社員の教育進度を、ビジネスユニットの枠を超えて、情報共有して行くそうなのです。
 
しかし、新卒社員と、既存のCRAⅠ(未経験/初心者CRA)の置かれている状況のギャップが非常に大きいのです。
 
サイネオスはこれまでにも、CRAⅠを採用しています。
入り口は2つあります。
 
 1つは、CRC(治験コーディネーター)・MR・経験の浅いCRAなどを「CRAⅠ」として採用。3ヶ月間のCRA研修受講後に各ビジネスユニットに配属するルート。
 
 もう1つは、日英バイリンガルの方を「COS(クリニカル・オペレーションズ・スペシャリスト)」として採用。1年間の研修を経て「CRAⅠ」となり、3ヶ月間のCRA研修受講後に各ビジネスユニットに配属されるルートです。
 
前者は中途採用ですが、後者のバイリンガルのルートには、新卒の方も含まれます。
既存のCRAⅠが研修を終えた後の運命は、配属されたビジネスユニットによって全く違うのです。
 
例えば、
 あるビジネスユニットでは、仕事が全くなく、日干し状態。数か月何もやることがない日々が続く。
 
 あるビジネスユニットでは、初心者でも容赦なく担当施設を大量にアサインされ、大変な目に遭う。
 
 また、あるビジネスユニットでは、CRAⅠを集めて「サポートチーム」を結成され、1年以上、ひたすらルーティーンのサポート業務のみを命じられる、などです。
 
サポート業務には、CRAとして独り立ちするための計画性はありません。
計画的教育もなく、トレーニングビジットもあまり行かせてもらえないまま、ただ雑用係のような立場でサポート業務をし、一定の日数が経過すると、突然担当施設をアサインされるのです。

既存のCRAⅠには、メンターをつけてもらう決まりもありません。
 
つい最近、初心者のCRAに、いきなり5施設のアサインがありました。
異動したシニアCRAが担当していた施設を、全て、初心者のCRAが引き継ぎさせられたのです。初心者への配慮は全く感じられません。
 
ここで少し、CRAⅠの施設同行(トレーニングビジット)についてお話します。
 
トレーニングビジットとは、CRAⅠが勉強のために、"先輩CRA" の施設訪問(ビジット)に同行させてもらう、貴重な実地研修の場です。
 
トレーニングビジットには、「施設からCRAⅠが同行する許可を得られるか」という問題以外に、社内にも以下のような条件があるため、CRAⅠが同行できるビジットの数は限られています。
 
 ・ 同行させてくれる"先輩CRA"が、同行・指導するCRAの要件に合致している(社内のトレーナー資格取得など)
 ・ CRAⅠの所属ビジネスユニットが、同行費用を承認している(遠方施設は交通費が高いので否決される)、など。

 

このような条件は、ビジネスユニット間で異なることがあります。
既存のCRAⅠは、トレーニングビジットになかなか行かせてもらえない状況でした。
 
しかし、新卒社員は、既存のCRAⅠとは全く違うのです。
 
 ・ 新卒社員は、研修期間中に最低5回(上限10回)Site Co-visit(施設同行)の指導を受け、指定アクティビティを実習させる。


 ・ 新卒社員の研修中の同行費用は、1人あたり20万円の予算を確保されており、配属先の部署ではなく、中央で一括負担する。


 ・ 新卒社員は、配属先以外のビジネスユニットのCRAに同行させてもらうことも可能。
 
ここで、CRAⅠであるAさんについて、少しお話しします。
Aさんは、研修中も、研修後も、長い間1度も施設同行させてもらえませんでした。

Aさんは、研修卒業から数ヶ月経った時、新しく上司になったラインマネージャーのBさんに
 「マネージャーがトレーニングビジットを調整する時、自分の部下のCRAⅠのことだけ考えるのではなく、ビジネスユニット全体のCRAⅠのことを考慮してほしい」と相談しました。
 

なぜなら、他の上司の部下のCRAⅠ達は、既にトレーニングビジットに複数回行っていたからです。
 
Bマネージャーは、数名のCRAに対し、Aさんを優先して同行してくれるよう依頼してくれましたが、翌日、BマネージャーはAさんを個室に呼び、厳しい口調でこう言いました。
 
「他のCRAⅠは、自分で直接CRAに掛け合って、同行させてもらうビジットを探しているんです。(Bマネージャーの部下でCRAⅠの)○○さんも、自分で探して見つけてから、私に報告しているんです。私が○○さんのトレーニングビジットを調整したことなんてないんですよ」
 
Aさんは驚きました。
Bマネージャーと、その前の上司から「今はAさんが同行できるビジットはない」と言われ続けていたのです。
それに、Aさんは、部署内の同行可能なビジットの正確な情報を持っていません。
さらに、CRAⅠが自分で探すということは、CRAⅠ同士の奪い合いになり、職場環境として良くないのでは、とも思えました。
 
Aさんは、
「トレーニングビジットは、マネージャーが調整して決めるのだと思っていました」と言いました。
 
すると、Bマネージャーは
「Aさんと認識が違うことが分かってよかったです。CRAの施設の訪問スケジュールを送りますから、それを見て探して下さい」と言いました。
 
Bマネージャーに厳しく咎められ、Aさんは「分かりました」と言うしかありませんでした。
 
しかし、SOP(=社内の業務手順書)には「ラインマネージャーがトレーニングビジットを計画する」と明記されています。

そんなラインマネージャーのBさんは、新卒教育プログラムのタスクフォースチームのメンバーになっているのです。


BマネージャーがAさんに「トレーニングビジットは自分で探すように」と言ったことと、新卒教育プログラムはあまりにもかけ離れています。
 
しかし、Aさんがこのことを相談/解決できるようなルートは、社内にありません。

ラインマネージャーのBさんは、旧INC出身であり、ディレクターから特に重用されている存在なのです。

ここで、Aさんの話は終わります。
  
サイネオスでは、表面的なイメージ戦略には大変な労力を割きますが、裏で起こっていることは、打ち出しているイメージと全く逆なのです。
 
各ビジネスユニットの、日本のトップはディレクターです。ディレクターの上司は、海外に住む日本語の話せない外国人です。
各ビジネスユニットは閉鎖された環境で、ハラスメントの温床になりやすいのです。
 
ディレクターのワンマン経営の中小企業のような世界です。
 
上層部の役職にいる日本人が、他のビジネスユニットで問題のあることが行われていることに気づいても、解決のために介入することはありません。
 
新卒社員と、既存のCRAⅠの格差は、今後どうなるのでしょうか。
このままでは、何らかのひずみが発生してくると思います。