あるご夫婦が通ってくれている

私の親世代のお二人だ


お父ちゃんは生まれた時から

心臓に問題があったため

今はペースメーカーが入っており

今まで何度も手術をしてきた

10年以上

最低でも月に1回は必ず治療に来て

メンテナンスを怠らないのである


当初は不整脈がすごかった

これでは不味いと何回でも来てくれた

病院でどうにかできないかと尋ねれば

自分の心臓止めるしかないですねと言われ

ショックを受けたと聞いた

私はどうにかする!と治療を続けた

そのうち不整脈は落ち着き

今は安定し月一メンテナンスで大丈夫だ


お父ちゃんとはよく話す

いろんなことを話す

息子と同い年の私のことを

大事に思ってくれている

治療院にある彫り物は

このお父ちゃんの作品である



お母ちゃんは

心臓が悪いお父ちゃんに

1人で車を運転させまいとして

必ず一緒に来ていたが

自分は治療を受けなかった

最初の頃数回やっただけで

後はずっとお父ちゃんの治療を見ていた


この1年ほどは

お母ちゃんも治療を受けるようになった

最後の治療から実に8年の歳月が過ぎていた

治療はせずとも

お父ちゃんと必ず一緒に来ていたので

話はしていたし説教もされていた



このお母ちゃんが先日来て言うのである

お父さんが死んじゃったら大変!

お父さんいなくなったら

私はどうしたらいいかわからない!と


90歳になろうかという

実母との仲が良くないため

長年喧嘩の日々であり

母娘でお互い罵倒し合って来たのである

マスオさん状態のお父ちゃんが

如何に大変だったかを思うところだ


その母親が妹のところに行ったため

少し余裕のできたお母ちゃんの言葉であった

後はお父さんが元気でいてさえくれれば!



みなさんはお分かりかもしれない

この後私が何を言ったのか

ご披露する


はあ!?何言ってんの!?

お父ちゃんなんか死んでもいいんだよ!

お父ちゃんが生きてようが死んでようが

あなたには関係ないんだよ!

あなたの健康や幸せや楽しいや嬉しいは

お父ちゃんがいてもいなくても

自分でやるしかないんだよ!

お父ちゃんが心臓悪いからとか

ばあちゃんがうるさいからとか

人のせいにしてんじゃないよ!

だいたいもうばあちゃんはいないし

お父ちゃんだって自分自身で調整して

今はお母ちゃんより元気だよ

何の問題もないわ!

さっさとこの食い過ぎをどうにかして

熊が出るからとか言ってないで

ガンガン歩きなさいよ!



とこんな感じでどつかれたわけだ

カーテンの向こうにお父ちゃんがいたが

容赦なく言い放ったのである


お父ちゃん

わかっているよ

私はわかっている

お母ちゃんはいつまで経っても

わからないかもしれないが

私はわかっている

お父ちゃんが何を望んでいるのかを


お母ちゃん自身が

自分のことを大事にできるようになることを

お父ちゃんは望んでいるのだ

自分のことにかまけて

あー大変だあー辛いとやっていてほしくない

自分がどんなに心臓良くなっても

お母ちゃんは変わってくれないから

困っているんだ

何かしら問題を見つけて

それらを言い訳にして

自分自身に

時間を割けないお母ちゃんに対する

悲しみがずっとあるのだ



お母ちゃんは言う

ずっと母親に振り回されてきた

お父さんの心臓問題に悩まされてきたと


違うよ

振り回されに行ってたし

リズム良く動いてくれてる

問題ないお父ちゃんの心臓を

勝手に問題視してたんだよ


もういい加減

そんなに先長くないんだから

ごちょごちょ言ってないで

さっさとやりなさいよ!とどつかれて

帰っていったお母ちゃんである


お父ちゃんは帰り際にしみじみ言った

今日は本当に

いいお話をありがとうございました!と

そして目で合図を送って行った



今日もやることをやれたかなと

思ったのであった

2人の元気を祈る







ちよ