この人を死なせない


そう思って治療に臨むことがある

なぜそう思うのか

そう思って治療に臨んでいた患者さんが

もう死んでもいいだろうと言ったから

改めて考えてみた


そう

私自身も前のように

死なせないと強く思っていなかったのだ

あれ?何でだろう?と思ったのだ


答えに至った

その人は自分自身の身を自分で守ることが

できるようになったからである

それが私にも感じられるから

もう私が息巻いて言わなくても

大丈夫だになったのである



飲食の調整など皆無であった

酒にも強いため

ストレスに任せて煽るように飲む

運動などしないし

自分のために時間を使うことなど

微塵もなかった


いつもいつも人のため

自分以外の事柄に全力を尽くし

本人が言う大丈夫大丈夫の信憑性は

皆無だったのである

その自分以外のものに注ぐ力たるや

他に追随を許さない

この人を

無駄に早死にさせるわけにはいかないと

治療も説教もフルマックスで臨んでいた



ずっと治療を続けてきた

死なせないと思って

死なせないと言いながら続けてきた


飲食の調整をするようになった

運動をするようになった

自分のための時間を

確保しようと努力するようになった


彼の言う大丈夫が信憑性を増してきたのだ

脈を診てもこれなら大丈夫と思う

私が彼の生き死にに

とやかく言う必要が無くなったのである


だから

死なせないなどと

私ごときが言うことではないと

思うに至ったのだろう



誰しも

自分の身を自分で守ることを

怠ってはいけないのだと思う

どんなに人のためにと尽力したとしても

死んでしまったらそこで終了だ


身を粉にして尽力したから

あの人は死んでしまったと言われることを

望んでいるのだとしたら

私は全く賛同できない

責任や信念だと言われようとも

格好つけてんじゃねぇよ!である


本当に格好つけるのなら

元気に責任や信念を突き通せ!

それこそが格好いいと思うから



魅力的な人とは

自己の至らなさも弱さも

何もかも認めた上で

人の助けも気持ちも素直に受け取りながら

少しでも成長しようと

日々の悲喜交々の中に

様々な気づきを得ながら

自分の行動変容をも恐れずに

進んでいく人なのだと思う


そんな人はきっと

いろんな人々を助けるし救えるし

人と人の繋がりを

紡いでいけるのだと思う



そんな格好いい人が

増えていってくれるといいなー

と思いながら

日々治療をしてるんだなーと思う






ちよ